コンプライアンス研修は階層別に企画・実施されることが多く、またそれが効果的であるといわれます。その理由を考えてみたいと思います。
(2020.04.01)
コンプライアンス研修は階層別に企画・実施されることが多く、またそれが効果的であるといわれます。その理由を考えてみたいと思います。
(2020.04.01)
コンプライアンス経営という言葉通り、コンプライアンスに関わる取り組みとは経営そのものであり、それをあえてコンプライアンス経営と呼ぶのは経営の変革が必要であるという意味が込められています。つまりコンプライアンス経営はマネジメントの変革に向けた取り組みだということです。
開催目的と手法の整合性という観点から考えてみます。企業が階層別を行う目的は大きく2つあり、コンプライアンス教育にもこの2点がそのままあてはまるため、階層別に企画・実施する教育が基本となります。
1つ目は、各自が果たすべき責任は階層別に決まり、それぞれに対する期待を明らかにし、その期待に応えるめの必要な能力開発を行ということです。この目的を果たすための教育は階層別に企画・実施することが合理的です。これが、階層別コンプライアンスが指示される最も大きな理由ではないでしょうか。
2つ目は、コンプライアンス経営は経営の変革を目指すものであり、その前提として新たな価値観形成が必要だということです。この場合の価値観とは、「わが社はこのような考え方を大切にしていくのだ、」というような根本的なものから、「当面はこの方針で事業運営を行う。」といった個々の事業方針や業務方針まで含みます。この価値観形成も職制を通じた取り組みが有効です。新たな価値観を組織の末端まで浸透させるためには、社長の鶴の一声だけでは不十分です。というのは社長メッセージは全社員に向けたものであり、具体性・個別性には限界があります。そのようなメッセージでは末端の社員には抽象度が高く、各自の腑に落ちる形の伝達は困難です。ここはやはり職制を通じて徐々に具体化させて伝える必要があります。そのための教育としては、まず役員研修を実施して事業領域別に具体化し、次に部長が部門別に具体化し、それをさらに課長が職場(所属)別にさらに具体化する必要があります。最終的には「あなたに期待することはこれだ。」というように個人別に落とし込む必要があります。したがって価値観形成のための教育は階層別に企画・実施すべきなのです。
さらにコンプライアンス教育ならではの事情もあります。コンプライアンス研修では不祥事や社内調査の結果について情報伝達を行い、受講者に危機感を持たせるとともに自分ごととしてコンプライアンスに取り組むことを求める必要があります。これらの情報はセンシティブなものであり、誰にでも伝えられるものではありません。そのため、「役員にはここまで」「管理職にはここまで」そして「一般社員にはここまで」という区分けが必要になります。そこで研修を階層別に開催する必要が生じます。
最後に、これは全ての教育についていえることですが、実施には有形無形のコストがかかり、かけたコストに見合う成果が求められます。コンプライアンス教育がマネジメントの変革に向けた教育であることを考えると、より上位の階層に対する教育が効果的であると考えられます。費用のかけ方も階層別に考慮、具体的には上に厚くする必要があります。そのため、コンプライアンス教育を階層別に実施することは理にかなっているといえます。
(2020.04.01)
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