かつてわが国のマネジメントの特徴として「ミドルアップダウン」という言葉が使われました。言い方を変えると、「日本の組織は管理職によって支えられている」ということです。この管理職を育成するのが管理職研修であり、その第一歩が新任課長研修です。この新任課長研修の在り方について考えてみたいと思います。
(2020.04.01)
かつてわが国のマネジメントの特徴として「ミドルアップダウン」という言葉が使われました。言い方を変えると、「日本の組織は管理職によって支えられている」ということです。この管理職を育成するのが管理職研修であり、その第一歩が新任課長研修です。この新任課長研修の在り方について考えてみたいと思います。
(2020.04.01)
大まかに分けて、企業組織は経営層(役員)、管理職層、及び一般層(一般社員)の3階層から成り立っています。この3階層はそれぞれ大きく役割が異なり、経営層は株主をはじめとする自社のステイクホルダ―対する経営責任を負い、管理職層は経営者に対してマネジメント責任を負い、一般層は実務における業務遂行に責任を負います。各階層をさらに細かな階層に分割し役割を定義することもできますが、この3階層の違いほどの大きな差異があるわけではありません。したがって、この3階層のスタートアップ教育はあらゆる階層別教育の中で最も重要だといえます。
その中で新任管理職研修は、上司から与えられた役割を果たすことを求められる一般社員から、部下に役割を与える立場に切り替わるタイミングで行われる研修であり、長い会社人生の中で最も大きな転機点を乗り切るための教育です。その意味で、企業内研修の中で最も重要なものであるといっても過言ではありません。管理職は課長、部長、本部長といった階層に分かれることが普通ですので、新任管理職研修とは新任課長研修を意味します。
新任課長研修では、上司として部下をマネジメントするために必要なスキル教育が行わなければなりません。課長に課せられた多くの役割の中で、新任課長研修で学ぶマネジメントスキルの代表格は、①職場で取り組むべき課題の設定、②職場(部下と部下に与えた仕事)の掌握、及び③人材育成の3つです。限られた時間の中でこれらの職責を果たす能力を付与することが新任課長研修の重要な学習目標になります。
併せて学ぶべきことは、労務管理の知識、人事評価や予算執行等の遮那システムの運用に関わる知識習得があげられます。また、様々なスキルを身につけたとしてもそれを活用してマネジメント責任を果たすことが上司である自分の役割であるという意識づけも重要です。
以上のように新任課長は多くのスキルを身につけ、それを駆使してマネジメント責任を果たさなければなりませんが、近年、新任課長研修に関してかつてのような精彩を欠く企業が増えています。その背景には経営環境の厳しさへの対処として継続されてきたコスト削減の波にのまれた結果としての「不要不急の研修は中止」という空気があり、その一環として新任課長研修を廃止する企業が増えているのです。確かにマネジメント教育を廃止してもすぐに業務に支障をきたすことは少ないでしょう。既存の管理職がマネジメントの骨格となってくれているからです。しかし、マネジメント教育を受けていない管理職が大半を占めるような状況になれば事情は異なってくるはずです。
そのような企業でも、人事評価や予算制度の説明会的な研修は継続されています。それはこれらの知識を持たない管理職が増えると、すぐに社内システムが機能しなくなるからです。これを家屋にたとえてみれば、窓ガラスが割れると雨風が吹き込んですぐに困るので窓の修理には費用をかけるが、柱が多少傷んでも家は倒れないので大黒柱がシロアリに食われても当面は放置するということと同じではないでしょうか。このような家は柱がもろくなり、地震で強い揺れを受けるとすぐに倒壊します。
同様に、長年にわたって管理職のマネジメント教育を怠ってきた会社では管理職が部下を率いて成果を上げるというスキルが失われていますので、環境変化に対して組織的な対応をとることが困難になります。コンプライアンス経営が浸透ないのも、職制を通じた方針伝達が機能しなくなっていたり、方針変更に従って業務形態を柔軟に変えていくための課題設定能力が職場から失われているのが原因ではないでしょうか。
ある大企業の役員から聞いた話ですが、若手の管理職と会話をしていて、彼らがマネジメントについて知識も関心もないことに気づき、暗然とした気持ちになったということです。マネジメントとはいま生じている目の前の問題を解決することだという程度の理解しかない管理職が会社のマネジメントを支えているという状況を何とかしなければならないと強く感じ、人事部門に管理職教育の再構築を指示したそうです。
間に合えばよいのですが、ここと同じような状況に陥っている会社は多いと思います。この問題は一企業の問題ではなく、日本経済全体の問題になりつつあるのではないでしょうか。いまこそこの問題の重大性に気づき、一刻も早い打ち手を講じていかなければなりません。新任課長研修はその第一歩なのです。
(2020.04.01)
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