新任課長研修と異なり新任部長研修を開催する会社は必ずしも多くありません。その理由として、部長の役割定義が明確でなく、部長になったからと言って新たに特別な役割が付与されるという認識が低いからではないでしょうか。ここでは、部長ならではの役割を確認し、新任部長研修の重要性について考えてみます。
(2020.12.06)
新任課長研修と異なり新任部長研修を開催する会社は必ずしも多くありません。その理由として、部長の役割定義が明確でなく、部長になったからと言って新たに特別な役割が付与されるという認識が低いからではないでしょうか。ここでは、部長ならではの役割を確認し、新任部長研修の重要性について考えてみます。
(2020.12.06)
部長とは部をマネジメントする人です。一般に部長の下には複数の課長がいますので、課長よりも多くの部下を預かっている人であるとも言えます。その分、与えられた予算の額も大きく、決裁可能な金額も課長よりも大きなものとなります。本部制を採用している会社では本部長の直属の部下となり、会社の戦略レベルの意思決定を受けた部門運営を行うことになります。本部制を採用していない会社では、社長の直下の職位が部長となり、まさに戦略レベルの意思決定に直接関与するため、取締役が兼務することも多いと思います。要するに部長とは、会社の中でかなり「偉い人」ということになります。
ところが、部長と課長のマネジメントはどのように違うのかと問われると、答え方に困ることが多いのではないでしょうか。より多くの部下への指示命令、より大きな金額の予算の執行と達成という答えが多いと思いますが、それでは部長は課長の拡大版なのでしょうか。
軍隊では、中隊長以下が「戦闘」の指揮官であるのに対して、大隊長や連隊長は「戦術」の指揮官、師団長や軍司令官は「作戦」の指揮官であり、それ以上(方面軍司令官など)は「戦略」の指揮官とされることが多いようです。この戦闘-戦術-作戦-戦略というのは単に規模の大小だけでなく、求められる成果に質的な違いがあります。
戦略(ここでは軍事戦略に限定)というのは、より上位の戦略(国家戦略)が自国の軍隊に求める成果を実現するために、軍内部の諸資源を最適配分し、どのようなシナリオで成果を実現するのかを考えることです。作戦とは戦略の実現に必要な個々の重要課題を設定し、その達成方法を企画することです。戦術とは作戦の実施計画を立案することであり、戦闘とは直面している敵を排除する行為のことです。
これを企業経営にあてはめると、経営陣(取締役、本部長級)の使命は戦略レベルのマネジメントであり、中(長)期経営計画の立案とそのための資源確保となります。そして部長の使命は作戦レベルのマネジメントであり、与えられた経営資源を活用して達成すべき課題を設定し、その達成方法を立案することになります。ちなみに課長の使命は戦術レベルのマネジメントであり、部長から与えられた課題を達成するための実施計画を立案し、個々の部下に役割を与えることで成果を実現することになります。そして係長・主任の役割は戦闘レベルのマネジメントであり、実務遂行の中で直面した個々の問題を課長の指導の下で解決していくことです。
では、新任部長研修での学習目標を設定してみたいと思います。
まず、部長は経営陣が策定した中(長)期経営計画を受け、自部門として取り組むべき課題(部門課題)を設定することができなくてはなりません。部門課題には達成目標(いつまでに、どのような成果を実現する必要があるのか)だけではなく、課題に取り組む際の基本方針、投入可能な経営資源(ヒト・モノ・カネ)について明確化されている必要があります。
続いて必要な経営資源、とくにヒト(人材)の確保に関する計画が含まれなければなりません。モノとカネは経営陣に要求することで調達が可能ですが、ヒトの調達では求める人材の特性を明らかにし、調達方法を含め、部門として責任を持って検討する必要があるからです。
さらにはまとまった数の部下を率いていくことになりますので、各自の能力を効果的に発揮させる仕組み構築が求められます。部内の組織編制(課、係、またはプロジェクト等)をどのように設置すべきか、組織運用のルール(内規等)をどのように定めるのかといった点も、部門特性に合わせて検討する必要があります。
以上より、新任部長研修の学習目標として最低限含まれなければならない事項は、次のようなものとなります。
① 部レベルの中期的視点での課題設定
② 部の人的資源の確保
③ 部内の組織管理
(2020.12.06)
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