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新任コンプライアンスリーダーの手引き

6.相談・通報への対処

CLはコンプライアンス体制の一翼を担う存在である以上、相談・通報を受けた場合には責任ある対応が求められます。しかし、CLはコンプライアンスの専門家ではないため、独自の判断に基づく行動は厳に慎み、コンプライアンス部門との速やかな連携を図ることで、問題解決への貢献が求められます。

相談・通報対応の重要性

 コンプライアンス違反に気づいた人がコンプライアンス部門に報告するのが「通報」であり、「相談」という形をとる場合もあります。また、コンプライアンス違反による被害者がコンプライアンス部門に話を聞いてもらうときには、多くの場合「相談」の形をとります。いずれにせよ、相談や通報が生じる背景にはコンプライアンス違反(またはその疑い)が存在します。コンプライアンス問題への対応では早期発見が重要です。些細な事象が大問題になる前に、適正な方法で問題処理を図ることが不祥事対応の基本です。これらの相談・通報はコンプライアンス部門(内部通報窓口)に対して行われることもありますが、CLへの相談・通報という形をとることもあります。社内ルールでCLにこれらへの対応を義務付けているかどうかに関わらず、相談・通報者はCLをコンプライアンス体制の一機関とみなしているわけですから、ここでCLが不十分・不適切な対応を行ってしまえば、「当社のコンプライアンスは機能していない」という誤解を生み、最悪の場合、そのまま外部への通報(内部告発)にもつながりかねません。CLにとって、相談・通報への対応は重要な役割であると考えてください。

相談・通報者の状況理解

 相談・通報者は、必ずしも冷静な状況にあるとは限りません。むしろ、気持ちが動揺し、また自分がこのような行動に出ることの是非に関しても確信が持てない状況であることが多いものです。CLとしては、できる限り相手を落ち着かせながら、相手の言い分を冷静に聞いてあげることが求められます。いうまでもなく、ここで聞いた情報は、コンプライアンス関係者以外に漏れることはないことを保証してあげてください。なによりも、相談・通報者は自分ではどうしたらよいのかわからないし、早く解決してほしいという要求を抱いているのです。このような相手の心情を十分にくみ取ってあげる配慮が必要です。

事実関係調査の説明

 相談・通報者から得られた情報は、その全てが真実であるとは限りません。本人が被害者であるという場合には、加害者とされる人物の言い分も聞く必要があるでしょう。そのためCLとしては、まずは訴えの趣旨を了解した旨と、今後の手続きの流れを簡単に説明し、問題解決に向けての本人の希望を聞くと同時に、今後はコンプライアンス体制の仕組みを通じて調査、その他の措置が行われる旨を理解させる必要があります。間違っても、CLの個人的な判断を断定的に伝えてはなりません。

コンプライアンス部門との連携

 相談・通報を受けたCLは、速やかにコンプライアンス部門(内部通報窓口)とコンタクトをとる必要があります。そこで本人の主張を正確に伝達し、その後の対応についての指示を受ける必要があります。以後の行動はコンプライアンス部門の指示に従うことになります。

公益通報者保護法の精神

 相談・通報対応に関連するCLの必須知識として、公益通報者保護法があげられます。本法は、社会正義の実現のために通報を行った本人に不利益が及ぶことを防止するものです。規定内容の詳細は条文(全11条)を参照していただくとして、重要なポイントは「社会が公益通報者を保護しようとしている」という点を理解して対応にあたるということです。

<活動指針>

  • 規定の有無に関わらず、相談・通報対応はCLの重要業務である。
  • 動揺した相談・通報者の心情をしっかり受けとめること。
  • 相談・通報を受け付けた後の進行手順を説明すること。
  • 速やかにコンプライアンス部門に連絡し、その後の指示を受けること。
  • 公益通報者保護法の精神に則って対応を行うこと。