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コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(入門編)

3.求められるスキルと自己啓発

 アナウンサーのようにしゃべることが上手な講義とは限らないし、笑いをとって受講者を楽しませることが研修の成功を約束するわけではない。必要な知識を身につけ、自分の言葉で説明できるようになることと、講師業務のセオリーを学び、その実践の機会をできる限り多く持つことが講師業務に熟練する道なのである。

自社を知る

 社内の人材が教壇に立つことの意義は、自社の事情に精通した者がコンプライアンスを語ることができるという点である。だからこそ、コンプライアンスに関する限り、社内事情の全てを知り尽くすほどの熱心さが求められる。制度の細則はもとより、現在トップが関心を寄せているコンプライアンス課題を理解することや、各部門での取り組みの温度差の実態など、あらゆることを知っておこうとする努力を忘れてはならない。

話し上手、名講師ならず

 研修講師はアナウンサーでもナレーターでもない。滑らかな喋り方が必須というわけではない。また、熱意は大切であるが、機関銃のようにまくし立てることが良い講義ではない。大切なことは「何を伝えるべきか」を十分に理解したうえで、「相手に伝わる言葉」を選んで、確実に伝えることなのである。話し下手な者は資料を見ながらでもよいし、早口ならできる限り間をとりながら話すように努めればよい。

笑いをとろうと焦るな

 世の中には、生来の才能で、普通に語る言葉のなかに「おかしみ」を込められる者がいる。そのような特性は、講義を行う上でも非常に役に立つ。是非、大切にしていただきたい。しかし、研修は落語でもコントでもない。受講者は笑うために会場に来ているわけではない。むしろ、不必要な「笑い」は講師の不謹慎さとも受け取られかねない。にもかかわらず、無理に笑いを取ろうとする講師や、逆にそれができないからといって自信を失う講師が存在するのは残念である。研修における笑いというのは、学習の中で気づきが得られた際に、自らの過去を振り返って、不意に笑みがこぼれるようなもので十分なのである。

セオリーを学ぶ

 研修講師業務とは、一定の専門技術を基盤とする仕事である。技術である以上、セオリー(基本と原則)が存在する。落語家やTV局のアナウンサーが、厳しいトレーニングを積んで一人前になるように、講師業務をきちんと勤めあげようと思うならセオリーを学ぶ必要がある。たとえば、1つの講座を企画するためには研修企画のセオリーが、教材を作るには教材作成のセオリーがある。講義にも研修運営にもセオリーが存在する。これらを学ぶことが講師には求められるのである。本小冊子には、初めて講師業務に就く者が必要とする最低限の知識が盛り込まれている。まずはこれを熟読して、講義に臨んでほしい。

場数を踏む

 講師業務は一種のフィールドワークである。ひと通りセオリーを学んだあとは、それを活用して多数の講義をこなすことが上達への道である。経験を積むことでセオリーの大切さに気づくことができるだろうし、より深くセオリーの意味を理解できるであろう。要は場数である。毎年3日間の講義を担当する講師歴10年の者より、初めて今年100日の講義を担当した講師の方が、講師としての完成度は高いのである。

<5 Check Points>

  1. コンプライアンスに関する限り、自社のことはなんでも知っておく覚悟をもつこと。
  2. 無理に噺家やアナウンサーのまねをする必要はない。
  3. 無理に笑いを取ろうとする態度は受講者の信頼を失う恐れがある。
  4. まずは講義の技術的なセオリーを学ぶこと。
  5. 志願して、できる限り多くの教壇に立つこと。