これまで企業内研修の企画は十分な成果を上げてきたとは言い難い。それでも人材育成が実現してきたのは、主として現場の努力に負うところが大である。しかし、変化に柔軟に対応するためには現場任せにするだけでは不十分である。新たな取り組みのためにも、現状の問題点を再確認する必要がある。
これまで企業内研修の企画は十分な成果を上げてきたとは言い難い。それでも人材育成が実現してきたのは、主として現場の努力に負うところが大である。しかし、変化に柔軟に対応するためには現場任せにするだけでは不十分である。新たな取り組みのためにも、現状の問題点を再確認する必要がある。
企業内研修における研修企画業務の現状は、必ずしも好ましい状況であるとは言い難い。それでも我が国では、企業の人材育成は長年にわたり、かなりの成果を上げてきたと言われる。その理由としては、企業の人材育成が、伝統的な徒弟制度型のOJTによる現場の技術伝承に大きく依存していたためだと考えられる。しかし、このような現場主導の仕組みは、過去の延長線上での人材育成には効果的ではあるものの、新たな取り組みや大きな環境変化への対応においては対応が後手に回るリスクが大きい。やはり、長期的な展望をもって企画を行う司令塔機能が必要である。
研修企画が十分なレベルで行われない理由の1つが、経営課題の曖昧さにあると考えられる。もとより優良企業においては、経営計画は明確であり、それに基づく課題設定についても十分であろうが、問題はそれが人材育成課題にまで落とし込まれていないことが多い点である。上で述べたように、わが国における人材育成は、現場に配属され上司先輩の指導により実現されるべきものであると理解されてきた。そのため、全社的な人材育成計画といっても、「どの部署に、何人の新卒者を配置するか」という範疇を大きく出ないものであった。もちろん適性についての配慮はそれなりに行われたであろうが、肝心の人材育成は現場任せが主流であった。そして人事部門の主催する研修は、新人研修や新任管理職研修など、節目の教育に限定されることが多かった。このような背景から、必要な人材像を描き、その育成に必要な研修をゼロから企画していくという機運が盛り上がりにくかったものと考えられる。
専門家たる人事部門ですら系統的な研修企画が必ずしも十分ではなく、それに熟練したスタッフが育ちにくい状況である。ましてや非人事部門で適切な人材育成スタッフが確保できるとは考えにくい。現場の実態は、「ベテランだから」「よく勉強しているから」というような理由で教育担当者に任命されるケースが多く、ときには「今年はポジションを与えにくいから」というような理由で、ポジションが空くまで教育業務を任せるようなケースもあった。人材育成担当者としての適性以外の理由で任命され、十分なトレーニングも受けていない者に適切な研修企画を期待することは難しい。
産業界全体の問題として、企業内研修の企画プロセスが整備されてこなかったことも、研修企画が不十分な原因としてあげられるだろう。教育学の世界では様々な理論や方法論の研究がおこなわれているが、如何せん学生教育中心のものであり、企業内研修の企画にそのまま用いることは難しいものであった。社内の教育担当者が入手できる情報といえば、人材育成専門誌に掲載される成功事例の類であり、「特定の課題を抱える組織で、特定の手法を採用したところ、成果が得られた。」というようなものである。それをそのまま自社に適用することは難しいし、成果にもつながりにくかったと思われる。
方法論は知らなくても、ベテランであればだれでも人材育成については一家言持っているものである。そのため、人材育成を所管する部署の部門長が交代すると、基本方針から大きく修正されてしまうことが多かった。これでは息の長い取り組みを要求される人材育成においては、致命的な迷走を繰り返してしまうことになりかねず、腰を据えた研修企画に取り組む動機も生まれにくいであろう。
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