研修も経営上の施策の1つであり、費用対効果の改善のためには効果測定の議論は避けられない。しかし、効果測定にもコストがかかるため、目的に応じた測定対象と手法の選定、代理指標の活用などによる合理的な方法で取り組まなければならない。効果測定の議論は、企画段階から始める必要がある。
研修も経営上の施策の1つであり、費用対効果の改善のためには効果測定の議論は避けられない。しかし、効果測定にもコストがかかるため、目的に応じた測定対象と手法の選定、代理指標の活用などによる合理的な方法で取り組まなければならない。効果測定の議論は、企画段階から始める必要がある。
人材育成とは息の長い取り組みであり、性急に効果を求めるべきではないという認識が根強く、これまで研修効果について本格的な検討に至ることは珍しかったが、最近では研修コスト管理にメスが入り始め、効果が期待できる研修に優先的に予算を割く傾向が表れてきた。研修も経営上の施策の1つであるからには、効果を把握した上で、合理的な予算配分を行う必要がある。
研修効果とは、学習目標が達成され、それが業務で活かされることであり、最終的には受講者の業務の中で実現されるものである。しかし、効果の実現可能性は企画段階から研修実施までの検討過程のそれぞれの段階で逐次決定される。とりわけ上流工程である企画段階での成否が大きな影響をもたらす。企画が誤っていれば、どれほど優れたインストラクションを行っても取り返しがつかないからである。その意味で、研修効果の議論は企画段階から開始すべきであり、測定方法の検討も同様に考えるべきである。
研修効果の議論においては、測定の難しさが障害となって話が先に進まないことが多い。確かに、「この研修の実施により、いくら利益が向上したか」という問いに答えることは至難であり、現実には不可能な場合が多いと思われる。もっとも、財務数字だけが効果ではないわけで、業務ミスの減少や顧客アンケートの改善なども重要な経営効果であると言える。しかしこれらの効果にしても、測定にはそれなりの手間と工夫が必要であり、全ての研修において効果測定の実施を求めるなら、そのコスト負担も膨大になりかねない。そこで、「代理指標(代用特性)」という考え方に着目したい。効果そのものではないが、この数値が改善すれば効果も上がっているであろうという「代理」の指標を用意するのである。研修効果の議論においては、研修品質がそれにあたる。「質の高い研修が実施できれば、経営効果も表れるはずだ。」と考えるのである。
研修品質に限らず、品質の議論に際しては、しっかりとした品質モデルを構築することが重要である。そうでなければ、自己に好都合な部分的な議論に堕しかねない。研修品質においては、少なくとも「内容のニーズへの適合性」「受講者にとっての学習の容易さ」「起用された講師の妥当性」「教材の完成度」「研修参加の容易さ」及び「学習環境の適切さ」などを要素として品質モデルを構築することが必要であろう。ただし、これら全ての要素を測定する必要はなく、研修の性質や効果測定の目的に応じて、必要な要素に絞って計測すれば足りる。
既に述べたように、経営効果の測定は技術的・経済的な障害が大きいため、全ての研修において実施することは難しい。しかし、重要性の高い研修や開催コストの大きな研修に絞って実施することは無駄ではない。この場合には、実際に計測できる事象を適切に選んで測定を行うべきである。たとえば、クレーム数の増減、受講者の上司から見た行動変容の有無などが考えられる。ただし、受講後アンケートのみに頼るのは危険である。アンケートは受講者の印象に基づく評価であり、参考程度に受けとめるべきであろう。
Copyright © 2010-2019 Aqua Knowledge Factory Co., Ltd. All rights reserved.