コンプライアンス研修は経営理念に基づく全社員対象のトップダウン型研修である。自社の抱えるコンプライアンス課題はユニークであるため、その課題に対応した研修企画は、コンプライアンス部門が独自の視点で主体的に進める必要がある。自ら講師業務を担当することを前提としつつも、外部への委託が必要な要素を切り分けて検討すること。
コンプライアンス研修は経営理念に基づく全社員対象のトップダウン型研修である。自社の抱えるコンプライアンス課題はユニークであるため、その課題に対応した研修企画は、コンプライアンス部門が独自の視点で主体的に進める必要がある。自ら講師業務を担当することを前提としつつも、外部への委託が必要な要素を切り分けて検討すること。
コンプライアンス研修は、人事部門や他の部門が主催する研修と比べ、大きな特徴がある。まず全社員を対象に実施しなければならない必須研修であるという点である。必須という意味では新任管理職研修などの階層別研修も同じであるが、コンプライアンス研修は同じ目的の研修を全社員が、原則として同じタイミングで受講しなければならない点で、より必須の度合いが高い研修であると言える。その結果、コンプライアンス研修の開催には多大の労力と時間が費やされることになる。またコンプライアンス研修は、その本質として経営理念に基づくトップダウン型の研修であるという点も大きな特徴である。階層別のマネジメント研修などを除けば、ほとんどの研修は個別スキルのトレーニングであり、現場主導のボトムアップで企画・実施されるが、コンプライアンス研修は現場サイドでの裁量の余地が乏しいのが特徴である。
研修の開催意図に関する裁量の余地は乏しいが、具体的な内容に関してはコンプライアンス部門が企画し、組織承認のもとで実施されなければならない。その意味では、他の研修と同じく、人材育成課題の確認から企画をスタートさせ、研修課題を設定しなければならない。コンプライアンス研修に関連する人材育成課題としては、次項に紹介するようなものが代表的であるが、そのすべてにおいて研修のみによる課題達成は不可能である。コンプライアンス経営においては「仕組みづくり」と「人づくり」が重要であると言われるが、仕組み作りに負うところも大きい。幸いなことに、コンプライアンスに関する仕組みづくりは同じくコンプライアンス部門が所管するため、教育担当者と制度構築担当者が有機的に連携を保ちながら研修課題の策定を行っていくことが期待される。
一般にコンプライアンス研修の企画では、階層別研修が基本スタイルとなる。コンプライアンス経営とは業務横断的な取り組みであり、各部門の業務特性に起因する課題もあるが、その多くは業務やマネジメント全般に関わる課題であるため、階層別の研修企画が最適なのである。階層別研修の企画であるため、人事制度で定められた階層別の役割・責任の確認からスタートしなければならない。各階層への期待と現実とのギャップを捉え、その解消のために、研修という手段を用いて実現できることを研修課題として抽出するのである。コンプライアンス研修の場合、コンプライアンス課題に関わるギャップを解消するための企画が求められるため、個別リスクへのコントロールについて、深い理解が必要になる点に注意が必要である。
「全社員対象の必須研修」というコンプライアンス研修の特徴により、研修の全面的な外部委託は予算面で非常に困難である。したがって、講師業務の大部分を社内講師、具体的にはコンプライアンス部門スタッフが担わなければならない。そのため、研修の運営にあたっては講師育成が重要な課題となる。また、社内講師のほとんどはプロ講師ではないため、自分たちで実現できる研修を企画しなければならない。技術的に内製化が困難な内容であるが、どうしても必要な研修に関しては外部委託を含めて検討する。
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