目的が不明確なまま実施される研修では学習効果が上がらないだけでなく、実施承認も得にくくなる。効果的なコンプライアンス研修実施のためには、意思決定者と受講者の双方が納得できるように、実施目的を説明できなければならない。
目的が不明確なまま実施される研修では学習効果が上がらないだけでなく、実施承認も得にくくなる。効果的なコンプライアンス研修実施のためには、意思決定者と受講者の双方が納得できるように、実施目的を説明できなければならない。
コンプライアンス研修に限らず、研修を実施する際には、「なぜこの研修を実施しなければならないのか」を明らかにする必要がある。受講者の立場に立てば、「なぜ自分がこの講座を受講しなければならないのか」が示される必要があるということになる。成人学習においては、「学習目的の明確さ」が学習成果を大きく左右するのである。
最も典型的な実施背景として、不祥事の発生があげられる。マスコミが取り上げるほどの事件・事故ではなくても、経営上、無視できない危険を伴う事象が生起した場合には、再発防止に向けた取り組みが必要になる。その手法としてコンプライアンス研修は最も重要なものの1つであろう。このような背景に基づく研修の場合、当該事件・事故の経緯に関する正確で客観的な情報提供と、会社としての受けとめかたを明確に示し、その上で今回の研修がその再発防止に有益であることを説明しなければならない。
中期的なコンプライアンス推進計画を策定している企業であれば、計画にステージごとの達成目標が示されているはずである。このような計画に基づいて実施される研修であれば、実施目的はその達成ということになる。この場合、今回の研修がその達成のために必要であることを示さなければならない。たとえば計画初年度の目標が「コンプライアンス経営の理解度向上」ということであれば「コンプライアンス経営の必要性と各自の役割」などが重要な学習項目となる。2年目の目標が「知識不足によるリスクの撲滅」であれば「法令や社内規程の学習」がテーマとなる。3年目の目標が「リスク対策の具体的な行動能力の養成」であれば「リスクマネジメント手法の習得」を目指した研修実施が必要になるであろう。
定期的にコンプライアンス経営の浸透度調査を実施する企業が増えてきている。調査結果を分析してみると、コンプライアンス研修実施の必要性と重点ポイントが見えてくる。調査内容は、一般にコンプライアンスリスクに対する認識度合いや、リスク源泉となりかねない事象(知識不足、不適切な業務行動など)の発生度合いなどに関するものが多い。たとえば、経年的に改善している要素と変化の乏しい要素を対比した場合、変化に乏しいものについて改めて研修を行い、認識を新たにするとともに問題発生の防止に取り組む必要があると言える。大企業であれば、全社の数値との対比で特定部門の傾向を把握し、部門別教育におけるテーマ選定のヒントにすることができるであろう。調査結果をもとに実施される研修では、判明した事実を数値で示し、この研修を受講することの重要性を理解させなければならない。
その他、経営トップからの要請により、コンプライアンス研修が企画されることもある。たとえば「健康で働きやすい職場作り」が重点課題として示された場合、人事部門が中心となってその課題に取り組むことになるが、コンプライアンス部門でもそれに連動して労働法に抵触するマネジメント行為を一掃すべく、管理職向けのコンプライアンス研修を実施することが考えられる。このような研修では、もとになったトップメッセージの振り返りや、人事部門をはじめとする全社的な取り組み状況を示し、コンプライアンスの観点からも研修実施が必要であることを説明する必要がある。
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