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コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(研修企画編)

8.学習項目の選択と講座への割り付け

 学習項目の選択では、受講者に求められている役割をベースに、その遂行に必要な範囲を網羅するようにしなければならない。上位職だからといって難しい内容を学習すべきであるとは限らない点に注意するとともに、業務の実態に即して検討を進める必要がある。

学習内容に関する誤解

 一般にコンプライアンス研修は階層別研修として企画されることが多い。階層別研修の講座設計でよくみられる誤りとして、研修テーマごとに、内容の難易度によって「初級」「中級」「上級」などの呼称を与え、一般社員には「初級」、監督職には「中級」、管理職には「上級」という研修体系を構築することがあげられる。この考え方の問題点は、管理階層の上下を単純に要求される能力水準の高低として理解している点である。これが実技習得であればベテランになるほど高度な教育を施すという考え方が妥当性を持つが、コンプライアンス研修は実技習得ではない。そもそも実技習得であっても、管理階層と難易度は連動しないはずである。階層別研修の企画では、その階層に求められる役割を明らかにし、それを果たすために必要な学習内容を選択するようにしなければならない。

学習内容の体系化

 この検討は学習内容を分類・細分化することから始める。まず、コンプライアンス研修における学習項目の分類を行うことから始める。たとえば「①コンプライアンス概念」「②社内制度の知識」「③ルールの理解」「④リスクマネジメント」などに大きく分類し、必要に応じて中分類以下の分類を行う。たとえば③を「法令」「業界規制」「社内規定」に分け、さらに法令を労働法、知財法など、規制分野ごとに分けるといった具合である。このように、学習項目を体系的に分類することで、受講者ごとに学習が必要な項目を配分しやすくなる。細分化作業は講座設計に必要な範囲に留めておく。

役割を考慮した細分化

 体系化された学習内容について、受講者の属性を考慮して更に分類していく。この場合の分類は、細分化ではなく学習目標を意識したものになる。たとえば「労働法」という学習項目であれば、「①正しい勤務に必要な労働法の知識」「②違法なマネジメントを防ぐ労働法の知識」「③適法な経営のための労働法の知識」などのような分類である。このように分類すれば、「一般社員には①」「管理職には②」「役員には③」の学習を求める、といった検討が可能になる。また監督職に対しては「①を中心に、②の内容のうち業務上の指示命令に必要な範囲を含める」という議論も可能になる(それぞれが意味する内容については関係者のコンセンサスを得ておくこと)。

項目選択の留意点

 各講座で取り扱う学習項目を選択に際しては、「この講座で何を学ぶべきか」という視点を忘れないことが重要である。「知っていてほしい項目」という視点で選び始めると、際限もなく項目が増えてしまうので注意が必要である。研修時間に限りがあるため、コンプライアンス経営の観点から、とくに重要な項目に集中的に時間を割かなければならない。また、想定受講者が人事研修などの他必須の研修で学んでいる学習項目を調査し、それとの重複を避ける配慮も必要である。

業務実態への配慮

 役割に応じた学習内容の選択においては、人事制度に定められた「階層(等級)別の役割・期待」などがベースとなることは言うまでもないが、それに加えて現実の業務実態への配慮も必要である。たとえば「人事制度としては監督職には人事評価の役割は与えていないが、○○部門では管理職の目の届かない場所で勤務が完結するため、監督職が実質的な一次評価者になってしまっている。」という実態があるならば、監督職にも管理職並み労働法の知識を与えることも考えなければならないであろう。

<5 Check Points>

  1. コンプライアンス研修の企画では難易度より学習内容を重視すること。
  2. 講座設計に先だって、学習項目を系統的に細分化しておくこと。
  3. 細分化の最終段階では、受講者別の学習内容を意識すること。
  4. 他の必須研修での学習内容を調査し、重複を避けること。
  5. 制度上の役割定義を前提としつつも、実態を調査すること。