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コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(研修企画編)

11.研修技法の知識(1) 講義型技法

 研修技法の基本は講義である。講義型研修技法は講義のスキルをベースとして、様々な付加的要素を加味することで、学習効果を高める工夫を行ったものである。

講義型の研修技法

 講義型の研修技法とは、講義をベースとしながら、講義の持つ単調さを回避するために様々な付加的な要素を取り入れたものである。全てに共通することは、研修効果が講師の話術と教材の完成度に依存する傾向が強いことである。

講義の特徴と留意点

 いわゆる一般的な講義である。講師はテキストを用いながらその解説を進めていく。講座設計においては、この講義を基調としながら、様々な技法を組み合わせる。研修効果は講師の話術はもとより、教材の完成度にも大きく依存するため、教材品質の管理とリハーサルの励行が重要である。

クイズと解説

 クイズとは、国家試験などの短答式テストに似た設問を用意し、受講者に解答させる技法である。正誤式、択一式、あるいは穴埋式などのように解答が容易なものから、記述式や論述式まで、様々なレベルのクイズを作成することが可能である。知識の解説を聞いているだけのインプット学習では、受講者は眠気を催すだけでなく、深い理解には至らないことが多い。クイズはアウトプット学習の一種である。自分で考え、活用することで知識は次第に定着していく。また、クイズに取り組むことで理解の不十分さや聞き逃した部分に気づくことができ、より確実な知識学習につなげることができる。注意すべきは、クイズの正解/不正解のみに関心が集まり、答を確認して安心してしまい、学習が浅くなる恐れがある点である。

講義による事例研究

 事例研究(ケーススタディ)は、現実に起きた事件や事故などを題材に、そのメカニズムや防止方法などについて講義による解説を行うものである。一方的な講義に終始することもあるが、時間に余裕がある場合には、受講者自身に問題分析を行わせ、発表や意見交換などをはさんだ後で、講師から解説を行うことで、より深い学習も実現できる。原則として講師の解説から知識を得ることでスキルアップを図る手法であるため、講師は事前に分析結果を取りまとめておく必要がある。注意すべきは、事例とはあくまでも特殊なものであり、その現象自体を記憶することに価値があるのではなく、その現象から普遍的なメカニズムを学ぶことが重要である点に気づかせなければならないことである。ましてや「面白いお話を聞いた」という記憶が残るだけでは学習効果は期待できない。問題分析をグループ討議形式で行う場合にはケースメソッドと呼ばれ、ケーススタディとは異なる学習効果を狙った体験型研修技法になる(次項を参照)。

セルフチェック

 チェックリスト(5問前後の簡易なものから50問を超えるものまで様々なものがある。)を用いて自分自身や自己の担当業務、所属部門などを診断することをセルフチェックと呼ぶ。統計データに基づきセルフチェックの結果から客観的な診断を下すことができるものから、現状確認にとどまるものまで多様なチェックリストが存在する。前者の場合には市販の診断ツールを購入することになるが、後者の場合には講師が教材として独自に作成することも可能である。いずれの場合も、最終的には講義による解説が行われるが、セルフチェックを介在させることにより、一般論としてではなく、「自分はどうなのか」という振り返りが行われるため、講義に関心を持ちやすくなり、より深い理解に到達できることが利点である。チェック結果について周囲と意見交換させることで更なる気づきを促す工夫もできる。

<5 Check Points>

  1. 講義型では、講義の単調さを補うために様々な付加的要素を追加する。
  2. 講義は全ての研修の基礎であり、話術と教材完成度が成果を左右する。
  3. クイズでは、正解/不正解や得点にこだわりすぎないこと。
  4. 事例研究の目的はメカニズムの研究であり、面白いお話ではない。
  5. セルフチェックでは講義を自分の問題として理解させることができる。