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コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(研修企画編)

15.管理職向けコンプライアンス研修

 コンプライアンス教育において、管理職研修は最も重要な課題である。コンプライアンス経営はトップダウンの取り組みではあるが、現実の不祥事は現場が震源になることが多いため、現場責任者たる管理職への期待が大きいためである。最近ではマネジメント研修との境目が曖昧になってきている。

役割と期待

 管理職はマネジメント責任を負う立場である。マネジメント責任には、部門の業務運営を方向づけること、職場内の問題解決、部下の評価と育成などが重要な要素として含まれる。一般に管理職向けコンプライアンス研修では、部課長級(次長などを含む)が対象となるが、あえて部長と課長を区分する必要があるかどうかは議論になりやすい点である。原則論としては、実務の最小単位を預かるのが課長であり、部長は複数の業務単位を統括し、管理職(課長)に対するマネジメントを行うことが求められるはずである。しかし、現実の業務では、部長が特定の課の課長を兼務したり、課長のいない部が存在したりするため、役割を明確に切り分けることが難しい場合も多い。次長職の場合には更にこの傾向が強い。人事部門主催の階層別研修で区別が行われている場合にはその考え方に従うべきだが、「無理に分けない」という考え方に立つ企業も多い。事業部長、本部長などについても、部長に準じた考え方に立つべきであろう。

コンプライアンス上の責任

 管理職はマネジメント責任を負うことから、そのコンプライアンス上の責任としては、部門におけるコンプライアンス推進の方向付け、自部門のコンプライアンスリスクへの対策、及び部下がコンプライアンス推進に協力できるように指導・育成を行うことがあげられる。とくに部門内に存在する、あるいは部門業務に関わるコンプライアンスリスクを洗い出し、必要なリスクコントロールを施すことは、管理職にとって重要なコンプライアンス責任であると言える。

主な学習項目

 管理職向けコンプライアンス研修では、部門内のリスクマネジメント責任を果たすために必要な知識を身につけることが第一目標となる。そのためには、リスクマネジメントの基本手順を理解するとともに、リスクの存在に気づくための知識が必要である。部門業務に関連するビジネス法務の知識はその典型的なものである。また、管理職自身のマネジメント行動がリスクを引き起こさないために、労働法やメンタルヘルスなどの労務管理の知識が重要になる。さらに最近のコンプライアンス研修では、リスク対策を立案する能力として、コミュニケーションや業務改善などの一般的なマネジメントスキルも重視されてきてる。

企画の留意点

 技術部門における専門教育を除き、一般に企業内の教育制度においては、管理職教育が最も重視される傾向がある(人事部門主催の研修など)。最近のコンプライアンス研修では、マネジメントスキルに該当する要素を扱うことが多いため、他の必須研修との重複に注意しなければならない。重複する要素を排除することで、一般の研修では扱わないコンプライアンスならではの学習項目を扱う余力が生じることが期待される。また、重複する要素であっても、コンプライアンスの観点から「上積み」を行えば、それは無駄ではなくなるであろう(例:人事研修で学んだ傾聴スキルを、コンプライアンス研修では相談対応スキルとして上積みする)。効果的なコンプライアンス研修企画のためにも、研修を人事部門と共同開催または共同企画することは非常に有効である。

<5 Check Points>

  1. 管理職研修では、部門内のリスクマネジメントの実現が重要である。
  2. 部長研修と課長研修の区別は実態に合わせて検討する。
  3. リスクの洗い出しとリスク対策に必要な学習項目を検討すること。
  4. 人事部門主催の研修との重複を避けること。
  5. 人事部門との研修共同開催などにより、コンプライアンス研修の成果を向上させる工夫が望ましい。