監督職は管理職とは異なり明確な権限を与えられてはいないが、実務のベテランとして現場業務のリーダーとしての役割を期待される。昨今、監督職に期待される役割が拡大する傾向があり、抱えるリスクも増大傾向にある。自社の監督職が現実に担う役割に即した研修企画が必要である。
監督職は管理職とは異なり明確な権限を与えられてはいないが、実務のベテランとして現場業務のリーダーとしての役割を期待される。昨今、監督職に期待される役割が拡大する傾向があり、抱えるリスクも増大傾向にある。自社の監督職が現実に担う役割に即した研修企画が必要である。
監督職とは、一般に係長・主任などの職位名が与えられる階層を指す。彼らは管理職としての権限と責任はないが、実務のベテランとして第一線での自立的な業務遂行が期待される。従来の理解では、「管理職の指導下で実務を遂行し、現場レベルの例外対応を行う人材」という役割の与えられ方が多かった。しかし最近では、管理職のプレイングマネージャー化が進み、従来に増して自立的な業務遂行の期待が高まっている。また、改善活動や企画業務などでプロジェクト型業務が増大していることを背景に、プロジェクトリーダーとしての活躍も期待されるようになっている。
本来の役割に基づいて考えれば、監督職のコンプライアンス責任の中心は、実務レベル(現場レベル)におけるコンプライアンスリスクを察知し、その影響を低減させることが中心になるものと思われる。具体的には、業務上のミスや不正行為などを防止するための業務プロセス改善と日常の業務監視、及び適切な例外対応と管理職への報告などがあげられる。しかし、最近の監督職への期待の増大に伴い、管理職に準ずる役割が求められるケースが増えており、それに伴い責任も重くなる傾向がある。たとえば、特定の部下に対する実質的な労務管理責任が課されたり、プロジェクト型業務の責任者に任命された場合には、職務内容にもよるが、関連するリスクを洗い出し、適切なコントロールの提案もできなければならない。
監督職に最も期待される能力は、現場実務におけるリスクにいち早く気づき、迅速な第一アクションがとれるスキルである。そのためには、広義の問題解決能力が重要である。他の研修で問題解決能力を学んでいる場合、コンプライアンス研修ではリスク対策に焦点を絞ることができる。そうでない場合には、日常業務における問題発見と解決技法を基礎から学ぶ必要がある。ビジネス法務に関しては、本来の監督職の立場では管理職ほどの重要性は持たないが、労務管理責任の度合いによっては労働法の知識が必要になるであろうし、役割の与え方次第で部門固有の業務に必要な法令知識(例:営業部門における契約関連法規)の学習が求められる可能性もある。また、部門内コミュニケーションの要としての立場も重要であることから、円滑な意思疎通に関わるスキルがコンプライアンス研修の中で扱われることが増えてきている。
監督職の役割は職場により大きく異なる。そのため、自社の監督職の位置づけを確認し、求める役割と要求される能力を定義したうえで研修企画に臨まなければならない。人事制度上の役割定義と業務の中で実際に期待される役割が異なる場合には、現実を考慮した研修企画を心がける必要がある。コンプライアンス研修がリスク対策を意図したものである以上、現実に存在するリスクを無視することはできないからである。
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