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コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(研修企画編)

17.中堅・若手社員向けコンプライアンス研修

 中堅・若手社員に大きなコンプライアンス責任を負わせることはできない。しかし、自己の担当業務を見直し、より安全・確実な業務遂行をこころがけることや、リスクに気づいた際の迅速な報告と指示に従った対応ができる能力開発が求められる。

役割と期待

 中堅・若手社員は、「担当者」と総称されることも多く、実務の最前線を預かるスタッフである。上位者の指導のもとで実務を担当することが期待されているため、本来なら彼らが責任を負うべきコンプライアンスリスクは多くはないはずである。しかし、最近のデスクワークのIT化や単純作業の外部委託の進展にともない、担当者レベルでも従来よりも重要な意思決定が求められるようになってきている。そのため、判断ミスや不正の防止など、彼らが負うべき責任は増大傾向にあると言える。

コンプライアンス上の責任

 中堅・若手社員には大きな権限が与えられていないため、コンプライアンス上の責任を厳しく問うことは不当である。しかし、コンプライアンス上のリスクは彼らの職務範囲にも点在している。これらのリスクを発見した場合には、迅速に上司や先輩に報告し、組織として適切な対策が打てる状況につなげる責任があると言える。また、上司・先輩の指示に基づいて、リスク対策に協力するのも彼らの役割である。

主な学習項目

 中堅・若手社員は実務担当者であるため、自らの行動が重大なリスクにつながらないよう、注意深く仕事を進めてもらわなければならない。普段、何気なく行っている行動が、実は非常に危険な行為である可能性もある。このように、中堅・若手社員に対しては、「知らないこと(無知)」が原因で、大きなリスクを生じさせることのないような教育が重要になる。個々人の仕事における留意点として、ヒューマンエラー防止の教育などは非常に有効である。作業ミスの防止、確実な情報伝達、あるいは怪我の予防など、自分の仕事を自分で見直すことが職場のリスクを低減させることにつながる。テーマ別にみると、情報セキュリティなどはこの典型的な例である。

企画の留意点

 経験も浅く、十分な問題意識も芽生えていない中堅・若手社員に対し、「そもそも論」を語っても学習効果は上がりにくい。重要なことは、「自分たちの問題として捉えられるように伝える」ことである。たとえば、日常業務のチェックリストなどを活用して、普段の自分の仕事の進め方が危険を伴うものであることに気づかせたり、受講者同士の話し合いを行って、体験の共有を行ったりすることが有効である。危険に気づくだけではなく、対策にも関心を持たせる必要があるが、この場合も考え方を教えて「具体策は自分で考えなさい」というやり方では実際の改善行動には結びつきにくい。知識は実務ですぐに使える形で与えてあげなければならない。フローチャートやワークシートなどを工夫することで、手順に従って考えていけば答(対策)にたどり着けるような工夫が望ましい。また、会社全体として、「報・連・相の励行」などの業務全般に共通する基礎教育が不足している場合には、コンプライアンス研修の中で補うことも必要である。

<5 Check Points>

  1. 中堅・若手社員の業務も高度化の傾向があり、それに伴いリスクも増大している。
  2. 目の前のリスクに気づくことや迅速な報告は、中堅・若手社員にとって最低限のコンプライアンス責任である。
  3. ヒューマンエラーなどの日常の業務行動に潜むリスクに気づかせ、対策を考えられるようにすることが重要である。
  4. 無知に起因するリスクを最小限に抑える。
  5. 難しい理論は避け、実務でそのまま使える形で知識を与えること。