子会社のコンプライアンス強化は、企業グループ全体で取り組むべき重要課題である。独立した事業体である子会社への介入には困難が伴うこともあるが、研修の共同開催や講師紹介など、できるところから着手し、最終的には子会社のコンプライアンス部門の自立を図らなければならない。
子会社のコンプライアンス強化は、企業グループ全体で取り組むべき重要課題である。独立した事業体である子会社への介入には困難が伴うこともあるが、研修の共同開催や講師紹介など、できるところから着手し、最終的には子会社のコンプライアンス部門の自立を図らなければならない。
連結会計に代表されるように、今日の企業経営はグループ経営が前提である。企業不祥事においても子会社が震源となってグループ全体を揺るがす事態に発展するケースも多く、不祥事防止において子会社対策は最重要課題となっている。子会社の問題はまさに親会社の問題であると認識して施策を講じていかなくてはならない。しかし、子会社といえども独立した事業体である。また我が国では子会社が独自に株式を公開している例も多く、自立の意識も強く、常に親会社の期待通りの施策が実行されるとは限らない。子会社の社長が親会社の社長の上司であった経歴の持ち主であることも珍しくなく、上から命令を下すような施策実施は困難なことも多い。
多くの子会社では、親会社とは異なり、人材をはじめとする経営資源の蓄積が十分ではない。経営規模が小さければ小さいほどこの傾向は顕著である。コンプライアンス部門についても、量的・質的両面で人材が不足している。コンプライアンス体制の構築にしても、小規模子会社の場合、コンプライアンスマニュアルはおろかコンプライアンス規程すら十分に整備できていないこともある。話を研修に限定しても、グループ会社に親会社と同等の施策を求めるのは無理がある。そのため、親会社による子会社コンプライアンス研修支援が重要になってくる。
研修支援の中で最も実行しやすいのが研修の共同開催である。親会社が主催する研修を、一定の費用負担を前提に子会社の社員が受講する形をとることが多い。ビジネス法務研修などはこの形になじみやすい。しかし、リスクマネジメントのスキル研修などではビジネスモデルや業務形態の違いにより、子会社にはなじみにくい要素が出てくる。ましてや「コンプライアンス方針の浸透」といった経営方針や理念に関わる教育では、共通の研修企画は困難であろう。
これは研修に関するノウハウ面での支援である。子会社の中には研修ノウハウ自体が全く蓄積されておらず、研修を実施したいが何から手をつけたら良いのか分からない、ということも多い。親会社といえどもコンプライアンス研修のノウハウがふんだんに蓄積されているわけではないので、実際の支援にあたっては、親会社で実施した研修事例の紹介や教材の無償供与、あるいは親会社で契約している顧問弁護士の紹介やセミナー講師への仲介などを行うことが多い。親会社が中心となってグループ内コンプライアンス会議などが持たれている場合には、その席上でのノウハウ共有などが行われる。
研修の共同開催や企画支援だけでは、いつまでも子会社のコンプライアンス部門が自立できない恐れがある。それに対する対策として、子会社のコンプライアンス部門スタッフの教育を親会社が担うケースがある。場合によっては親会社からコンプライアンススタッフが出向するケースも見られる。いずれにせよ、子会社が自分の力でコンプライアンス研修を企画・実施できる体制を早期に実現しようという取り組みは必要である。
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