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コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(教材開発編)

1.研修教材とは何か

 研修教材とは、研修で使用される全ての準備物を指す。どのような場面で、どのような目的で使用するかを検討し、最適な教材を準備し、講義に臨むことが大切である。効率的な研修の実現のためには、自作の教材だけではなく、市販教材で適切なものがあれば検討してみる価値がある。

研修教材とは

 研修教材とは、研修の実施に必要な教育ツール全般を指す概念である。講師にとって、質の高い研修教材ほど心強いサポーターはないであろう。テキストや資料類などが代表的であるが(狭義の教材)、PCやプロジェクタ、模造紙やペン、ときにテーブルや椅子なども教材の範疇に含まれる(広義の教材)。なお、このハンドブックでは主として前者について解説する。

目的による分類

 1つは知識伝達のための教材である。テキストなどの基本教材と補助的な資料類が代表的である。これらの教材には、受講者に知っておいてもらいたい情報を、過不足なく、読みやすく、かつ実務で使えるように記載しなければならない。次に学習促進のためのツールとしての教材である。ケースメソッドで使われるケースシート、研修用ゲームの実施要領、その他チェックリストなどがある。あくまでも学習の促進ツールであり、これらのツールを活用して知識学習の理解を深めたり、新たな気づきを得るのが目的で、そこに記載された情報自体を受講者に記憶してほしいわけではない。

使用場面による分類

 最も基本となるのが、研修の開始から終了まで、進行プロセスに従って順番にページをめくりながら使用される教材である。一般に「レジュメ(résumé)」あるいは「基本テキスト」などと呼ばれ、研修のペースメーカとなる。講義に沿って使用されるため、不要な情報が含まれていたり、逆に講義で触れる情報が抜け落ちていたりすると混乱の原因となる。最近ではMS-PowerPint(以下、PPT)の利用が一般的になってきており、レジュメの情報量は増大する傾向にある。これに対して、講師の判断で必要に応じて使用される教材がある。一般に「補助資料(参考資料、補足資料)」と呼ばれ、講義中に必要な個所だけが参照される。配布の形式として、開講時にレジュメとともに受講者に一括配布する場合と、講師の判断により適切なタイミングでその都度配布される場合がある。後者は「ハンドアウト」と呼ばれることがある。さらに、事前学習や事後学習のための教材や、実務で活用することを期待したツール(ハンドブックなど)を別途用意することもある。

媒体による分類

 Eラーニングではなくても、教材を電子的に配布することがある。印刷すると膨大な紙を消費してしまう資料や、頻繁に改訂がおこなわれる資料など、紙媒体での配布に適さない教材についてはイントラネット上で参照またはダウンロード可能にしておく方が望ましい。しかし、レジュメのように講義中に講師の解説を聞き、重要事項へのマーキングや書き込みが必要な教材については、いかなる場合でも紙による配布は欠かせない。

開発主体による分類

 社内で作成された資料か、外部から購入した資料(市販教材)かという観点で教材を分類することがある。後者は、専門性の高い学習を期待される受講者に対して、法令教育などを行う際に使用されることが多い。研修企画の時点でいずれを選択するかを明確化しておけば、準備作業の負荷見積もりができる。前者の中でも、社内で作成された既存の印刷物(例:コンプライアンス・マニュアル、業務規程集)を使用するケースなどは、負荷見積もりの観点からは後者に準じた扱いにすべきである。

<5 Check Points>

  1. 教材準備に際しては、資料だけでなく備品も含めて検討すること。
  2. 基本教材と参考資料など、目的に応じて教材を使い分けること。
  3. レジュメとハンドアウトなど、使用場面に適した形式で準備すること。
  4. 電子媒体での配布に適した教材を的確に見分けること。
  5. 適切な市販教材の活用は、研修準備の生産性を向上させる。