教材作成には著作権の知識が必要である。とくに引用のルールから逸脱してしまうと著作権侵害の問題を引き起こす恐れがある。基本的に教材に他者の著作物を利用する際には許諾を得る習慣をつけることが望ましい。
教材作成には著作権の知識が必要である。とくに引用のルールから逸脱してしまうと著作権侵害の問題を引き起こす恐れがある。基本的に教材に他者の著作物を利用する際には許諾を得る習慣をつけることが望ましい。
著作権法の保護対象は著作物である。著作権侵害を避けるためには、まず著作物の定義を正しく理解することが大切である。著作物とは「思想又は感情を想像的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(著作権法2条1項1号)」である。創作的な表現であれば著作物であり、そこに独創性までは求めないとされる。
実験・観測データや事件発生の事実などは著作物に該当しないが、それをグラフに表現した際、(棒グラフや折れ線グラフでなく)独創的なピクトグラムなどで表現されていれば、その表現自体は著作物となる可能性がある。法律は著作物とは言えないが、六法全書のようにその配列や選択に創作性のある書物は著作物と考えられる。契約書や社内規程などは一般には創作性はないと考えられるが、その中に創作性を伴う表現が混じっていれば著作物となり得る。国土地理院発行の地図は、そこに何を表示するかという選択が行われており、創作性を有する図形の著作物であると考えられる。
教材開発で他者の著作物を利用する際、最も注意すべき点は、その利用行為に著作権法の引用規定が適用可能かどうかである。引用に該当するためには、「公表された著作物」を「報道、批評、研究その他」の目的で「公正な慣行に合致」するように利用が行われることが条件になる。判例においては、「その他」の範囲には「参照」「紹介」を含むとするものもあるが、教材の作成がこれらの目的にあたるかどうかについては諸説ある点に注意したい。該当しないとすれば無断利用となり、著作権侵害が成立する恐れがある。
まず引用の対象が「公表された著作物」でなければならない。そして、引用する側の著作物と引用された著作物が明瞭に区別できなければならない。たとえば「 」や罫線で囲む、フォントを変える、字下げを行うなどの配慮が必要である。そして引用される著作物が引用する側の著作物に対して「従」たるものであることも要件の1つである。すなわち報道のために引用を行う場合であれば、報道という目的が「主」であり、引用される著作物は「従」でなければならないのである。そして出所明記も必要である。明記を怠ることがそのまま著作権侵害になるわけではないが、違法であり罰則が存在する。表示方法は、原則として引用箇所の直後に、原典名称と著作者名だけでなく該当ページ番号、書物なら版数、論文なら公表年や掲載雑誌名など、原典を紐解くことが可能な程度の情報が必要とされる。
新聞などの報道記事には著作権が存在しないという誤解があるが、訃報欄などのように単なる事実の掲載記事以外には著作権が付着するものと理解しなければならない。日本新聞協会の見解にも示されるように、記事の利用にあたっては、著作物として引用のルールに従う必要がある。新聞記事の利用にあたっては、各新聞社に窓口が設置されており、比較的簡易な手続きで複写利用が可能になっている。その際、使用料を請求されることは忘れてはならない。また、少部数の複写であれば、「社団法人日本複写権センター」のサービス(一部の雑誌等も含む)なども利用できる。新聞記事の複写はコンプライアンス研修では重要な教材となるものである。くれぐれもコンプライアンス研修の教材作成でコンプライアンス違反を起こさないよう、細心の注意を払いたいものである。
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