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コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(教材開発編)

5.コンプライアンス教材の特徴

 コンプライアンス研修は大きく様変わりしてきており、マネジメント教育との境目が消えつつある。しかし教材開発において、正確性の追求と最新情報への対応が重要であることには変わりない。それらを担保しつつ新たな取り組みを始めるためにも、生産性の向上は避けて通れないコンプライアンス教材開発の重要課題である。

誤記のリスクが高い

 コンプライアンス研修で伝達される情報は、法律上の禁止規定の知識のように、万一誤って伝わってしまうと大きな損失につながりかねないものが多い。また、法令違反に関わるものでなかったとしても、リスク回避のための判断基準や原則のように、誤解に基づく行動が大きな問題発生につながる恐れもある。したがってコンプライアンス教材の開発にあたっては、正確性の確保と誤解の回避に関し、高度な品質目標が課せられていると考えなければならない。

頻繁な改訂が必要

 コンプライアンス研修では、法改正や新たな判例、行政からの新たな通達や指針発表、あるいは業界団体の方針変更などに追随して、最新の情報提供が求められる。これらの情報は、各専門領域の主管部署からも必要な社員に通知が行われるはずであるが、コンプライアンス教材においてもそれを反映させた改訂が求められる。教材開発の担当者は、自らも情報収集に努めるとともに、各法令の主管部署等とも緊密な連携をとり、迅速で正確な教材改訂を行わなければならない。

生産性への強い要請

 多くの企業のコンプライアンス部門では、慢性的な人手不足に悩まされている。限られた人員の中で、専任の研修担当者を任命し、他の業務から分離することは難しい。たとえ些細なものであっても、現場で事件が発生すれば急行し、問題解決への協力が求められる。内部通報の窓口機能を担っている場合には、突発的な業務発生の可能性はさらに高まる。このような緊急性の高い問題が発生した際には、教材開発は後回しにならざるを得ない。いつ何どきこのような事態が生じるか分からないため、教材作成は可能な限り前倒しで着手するとともに、個々の作業の生産性を高める努力が必要である。

非専門家による作成

 コンプライアンス部門のスタッフは人事ローテーションの流れの中で任命されることが多い。すなわち(法務部門などの例外を除き)必ずしもコンプライアンスを専門とはしてこなかった人材であることが多い。また研修企画や教材開発についても専門的な訓練を積んでいないことがほとんどであろう。このような人材が教材開発に必要なスキルを迅速かつ十分なレベルで習得するためには、業務手順を標準化するとともに、成果物に求める品質要件も実用上問題のない範囲で緩和する必要がある。

多様な研修技法の活用

 コンプライアンス教育が始まった西暦2000年頃の研修では、自社の制度・体制説明と法改正への対応が中心であった。この種の研修では、その成果として一定の知識を正確に伝達することが求められ、またそれで十分であった。しかし、昨今のコンプライアンス教育はマネジメント教育との境目が曖昧になるほどに変容している。知識を持つだけでなく、それを使いこなすことが学習目標になりつつある。また、意識改革を成果として求めることも増えてきている。このような研修では、講義一辺倒の一方通行型の指導だけでなく、受講者の積極的な参画や気づきを促す仕掛けが求められる。これに対応できる多様な研修技法の知識と、そこで必要とされる教材を開発できるスキルが求められてきている。

<5 Check Points>

  1. コンプライアンス教材の第一要件は正確性である。
  2. 改訂の遅延は誤情報の提供と同じだと考える。
  3. 少ない人員で教材整備を行うために、生産性向上は重要課題である。
  4. 教育の専門家ではない場合、品質基準を上げすぎないことが重要である。
  5. 多様な研修技法の知識を身につけ、必要な教材の整備に努めること。