AKF Logo
  1. Home
  2. 講師向け資料室
  3. ハンドブック(教材開発編)
  4. 6.情報のブロック化と最適な情報量

コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(教材開発編)

6.情報のブロック化と最適な情報量

 情報の詰め込み過ぎは教材を分かりにくくする原因の1つである。それを回避するためには、認知限界を正しく理解し、合理的なブロック化の工夫を行うことが必要になる。

認知の限界

 人間が一度に認識できる情報には量的な限界が存在すると言われる。認知科学によれば、7±2という数が認知限界の目安とされている。7±2の情報の塊はチャンク(chunk)と呼ばれる。分かりやすい教材を作るためには、受講者に一度に見せる情報量をこの限界の範囲内に抑制しなければならないということである。この限界を無視して情報を詰め込むと、読む者は理解を容易化するために、自己の判断で分割を行ってしまう。このときの分割結果が教材作成者の意図に合致しているとは限らず、ここに誤解の余地が生まれる。なお、ここでは7±2を構成する一つひとつの要素を情報ノード(node)と呼ぶことにする。

7±2は目安 

注意すべきは、この数は目安であるということである。たとえば、1つの情報ノードが単語である場合には9(7+2)個あるいは多少それを超える数の情報ノードを一度に認知可能かもしれないが、より複雑な情報ノードであれば5(7-2)個、あるいはそれ以下の数しか一度に認知できない可能性がある。さらに、読む者が大人である場合と小学生である場合では、認知可能な限界は異なるはずである。

情報のブロック化

 大量の情報が含まれた研修教材で、受講者に一度に見せる情報ノードを7±2以内に収めるためには、情報をブロック化する工夫が必要になる。情報のブロックを作成する際には、一目見てそれが独立したブロックであることが理解できなければならない。そのためには「罫線で区切る」「空白を空ける」「改ページを行う」などの方法が有効である。1つのページに大量の情報を詰め込んでしまうと、ブロックの境目を明確化しにくくなり、見づらい教材となってしまう。

意味のあるまとまり

 情報をブロック化する際には、1つのブロックには共通の意味を持つ情報ノードだけを含むようにしなければならない。そうすることにより、ブロックに特定の意味を与えることができ、内容の把握が容易になる。また、あるブロックに1つの意味を与えることができれば、1ページに複数のブロックが存在していても、その数が7±2以内であれば、一度にページ全体を把握することが可能になる。

情報ノードの捉え方

 たとえば、PPTで箇条書き形式のスライドを作成する場合、原則として箇条書きの数を7±2の範囲に押させることが望ましいことになる。しかし、これはあくまでも全ての箇条書きを一度に認識してもらう必要がある場合で、箇条書きに階層構造があり、第1レベルの数が7±2に収まっておれば、第2レベルを含めて10以上の箇条書きがあっても認知可能であると考えられる。どの単位を情報ノードと捉えるかは作成者の判断にゆだねられるが、読み手がそれを情報ノードであると認識可能な範囲でなければならない。

PPT活用の留意点

 PPTを使って教材を作る場合、スライドが1つのブロックを構成することが多くなると思われる。しかし、スライドの大きさ(紙面)は固定であるため、情報量の多くないブロックを作成した場合、大きく余白ができてしまうことになる。それを埋めようとして他のブロックに配置すべき情報ノードを同じスライドに組み込んでしまうと、ブロックが意味のあるまとまりとして認知されにくくなり、結果として見づらい教材になる恐れがある。原則として、1枚のスライドは1つのブロックとして構成するという考え方を貫くべきである。

<5 Check Points>

  1. 人間が一度に認知できる情報の数は7±2が目安である。
  2. 情報を7±2以内に収めるためにはブロック化が必要になる。
  3. 1つのブロックには同じ意味を持つ情報を組み込むこと。
  4. 認知限界の数値は、一つひとつの情報ノードの複雑さにも依存する。
  5. PPTでは原則として1スライド1ブロックと考える。