AKF Logo

コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(教材開発編)

7.情報の構造化とラベリング

 複数のブロックに分割された情報は、互いに関連性を有しており、構造化して捉えることができる。教材作成者には、全体構造とその中での個々のブロックの位置づけが受講者に的確に伝わるような工夫が求められる。ラベル付けや全体マップなどが代表的な手法である。

構造化の考え方

 情報のブロック化を行う際には、情報ノード数を7±2以内に収めるだけでなく、ブロック間の関連性を明らかにして、構造化を図ることが必要である。ここでいう構造化とは、一言でいえば、トップダウン思考で情報を分割していくことを指す。この場合、1つのブロックをその下位のブロック群の総括ブロックとして位置づけることが望ましい。また、総括ブロックの下に存在するブロックの数についても、7±2以内に収めるべきである。

分割の基準

 どのように全体を分割していくかは情報の中身による。時系列にそって説明が進行するような情報であれば「時間による分割」を行う。同じく作業の手順にそって説明が進行するような情報であれば「手順による分割」を行う。物事の構造を説明する場合には、そのものの構造(パーツ、要素)に合わせた分割になる。複数の概念の説明を行う場合には、個々の概念単位で分割が行われる。思考プロセスを追いかける場合であれば、前提条件、そこから導き出される中間結論、そして最終結論というような分割になるであろう。

ラベル付け

 同じ意味を持つ情報を集めて細かくブロック化された情報は、そのブロックにどのような情報が記載されているのかを一目で理解できるようにラベル(タイトルなど)をつける必要がある。ラベルが付与されることで、内容の一覧性が高まるだけでなく、読む者に何が書かれているかを予期させる効果(先行オーガナイザと呼ぶ)、読まなくてもよい情報を読み飛ばせる効果、そして振り返り学習時の検索の容易化などの効果が生まれる。また、大量の情報に初めて接した者は、無意識に情報をブロックに分割するとともに、個々のブロックの意味を考えてそれにラベルを付けようとする。このとき付けられたラベルが教材作成者の意図に合致していればよいが、そうでなければ内容を読み誤ってしまう恐れがある。誤解を防ぐためにも、作成者は自己の意図に忠実なラベルを付けておくべきである。

関連性の表示

 同じ意味を持つ情報が大量に存在する場合には、認知限界を超えないようにするために、あえて複数のブロックに分割する必要が生じる。そのような場合には、複数のブロックが集まって1つの意味を持つ情報の塊を構成していることを明示することが望ましい。具体的にはラベル(タイトル)を工夫し、一連の同趣旨の情報であることを示す(例:○○法の基本理念①、○○法の基本理念②、…)。

全体マップの効用

 教材には多くの情報が含まれるため、ブロックの数も膨大になる傾向がある。また、その中に階層構造が存在するのが普通である。そのような場合には、適宜全体マップ(目次など)を用意すると受講者が研修内容の全体を把握し、順次学習していく個々のブロックの位置づけを容易に理解することができる。全体マップの作成にあたっては、階層構造の中のどのレベルで作成するかを判断する必要がある。いたずらに細かいブロックまで含んでしまうと、かえって見通しが悪くなるため、細かくても第2~3レベル位までの階層で作成する方が望ましいことが多い。

<5 Check Points>

  1. ブロック数が増えて来ると、ブロック間の上限関係を意識して、階層構造を形作るべきである。
  2. 構造分割の基準は伝えたい情報の性質に応じて決める。
  3. 各ブロックには内容を正確に表すラベルをつけること。
  4. 関連性の深いブロックや連続する一連の情報にはそれとわかるラベルをつけるべきである。
  5. 全体構造を理解できるマップを用意することが望ましい。