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コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(教材開発編)

11.文字情報の編集

 文字情報の編集は無意識のうちに行われることが多いが、教材の見やすさ(読みやすさ)に大きく影響するため、教材開発では注意を要する事項である。正しい書体・ポイント数の選択、文章の行間・文字間の詰め方、揃え方、及び適切な強調の方法などに注意を払いたい。

書体の基礎知識

 教材作成では和文書体はゴシック体と明朝体の2種類があれば十分であろう。毛筆体やポップ体などの装飾性の強い書体は教材には向かない。見出しや強調したい語句にはゴシック体、長い文章を読ませるときには明朝体を用いるのが基本である。PPTのスライドでは、全てをゴシック体で記述するような基本設定になっていることが多いが、これはスライドに記載される情報は、基本的に強調したい情報であるという前提に立っていると考えられる。書体の選択にあたっては、太さ(weight)の指定も重要である。強調したい部分には太字を充てる。ソフトのツールバーにある「B」(太字指定)ボタンを使うのが簡単だが、これは機械的に太さを変えているだけなので、太字用に設計されたフォント(例:MSゴシックに対してHGゴシックE)を使う方が読みやすくなることを覚えておきたい。また、プロポーショナル・フォントと等幅フォント(Monospaced Font)の違いも意識すべきで(例:MSPゴシックとMSゴシック)、不注意により混在させないようにしたい。またフォントの選択にあたっては、自分だけが持つフォントを使うことは避け、標準化を意識しなければならない。

文字の大きさ(ポイント数)

 スライドで使用する文字の大きさは、視認性(後方の席からでも読めるかどうか)を重視して決めなければならない。しかし、PPTでレジュメを作成する場合には、補助資料に入れるべき情報まで含んで作成することも多く、その場合には最初から視認性はあきらめざるを得ないこともあり得る。このような場合には、講義において強調したい個所(昔であれば板書したい個所)だけは後方の席からも読める大きさとし、補足情報は手元の配布資料で確認してもらうなどの工夫を行いたい。

行間・字間と段落

 大量の文字情報を1スライドに挿入したい場合、文字を縮小する以外に行間・字間を詰める方法があるが、詰めれば詰めるほど読みにくくなることを覚悟しなければならない。やむを得ず詰める場合には、フォントの太さを落とし、少しでも読みやすくする工夫を行いたい。また、段落と段落の間には、段落内の行間よりも広めの間隔を空けるべきである。段落は意味のある情報のまとまりであり、段落が変われば、あとに続く文章は異なる意味を持つはずである。読む者にこの点を意識させ、読みとるべき情報を考えさせるために、段落の境目は明確にすべきである。

文字揃え

 箇条書きの場合、ほとんどの場合は左揃えが採用される。これは文章の頭を揃えることで、箇条書きされた情報を1つずつ確認しやすくするためである。万一、右揃えをしてしまったら、それが箇条書きであることに気づかれない恐れも出て来る。中央揃えを採用するときは、その必要性を十分検討すべきである。まれに全ての情報を中央揃えしたスライドに出会うこともあるが、見やすさの点でも、装飾性の点でも意図を達成しているとは思えない。また、意外に忘れがちなのが、長い文章を記述する際の両端揃えである。文章の右端がきちんと揃っていることで読みやすくなるし、洗練された印象になる。

装飾と強調

 とくに重要な情報は、スライドの中でも目立つように強調しなければならないが、過剰な強調はかえって目的達成の妨げになる。いくら重要事項を説明しているからといって、1スライドに10か所以上も強調箇所があれば、互いに埋没してしまい、もはや強調とは言えなくなるであろう。また、装飾性の強いアニメーション機能の多用も、視覚的にうるさい印象を与えるだけで、受講者の理解度向上にはさほど貢献しないと思われる。

<5 Check Points>

  1. フォントは目的に合わせて選択する(装飾性の強いものは避ける)。
  2. スライドの文字の大きさは、後方席からの見え方に注意して決める。
  3. 行間・文字間を詰め過ぎず、段落の境目は十分な間隔を空けること。
  4. 不必要な中央揃えを避け、長文では両端揃えを忘れないこと。
  5. 強調のための過剰な装飾は逆効果になるので避けること。