コンプライアンス教材にはレジュメ、補助資料、演習要領、及び事前・事後課題などがあるが、これらは全て、当日の研修を成功させるために存在するのであり、講師は自らの講義に合わせて最適な準備を行わなければならない。
コンプライアンス教材にはレジュメ、補助資料、演習要領、及び事前・事後課題などがあるが、これらは全て、当日の研修を成功させるために存在するのであり、講師は自らの講義に合わせて最適な準備を行わなければならない。
レジュメについては、講義の進行に忠実に作成されなければならない。講義の途中で、ページを逆戻りするような扱いは、可能な限り避けるべきである。とくに作成にPPTを用いる場合、スライドの逆流は講義の中断につながるため、振り返り学習が必要なスライドに関しては、「再掲」などの注記を入れて重複収録することが望ましい。また、レジュメの情報量は多すぎても少なすぎてもよくない。原則として、講義で触れられない事項で資料のみを配布しておきたい場合には、その旨を表示するか、できれば巻末または別冊に集約して、資料編として区別することが望ましい。講義で触れながらレジュメが用意されていない要素については、受講者の記憶に残りにくいため、重要事項については、項目名だけでもレジュメに記載すべきである。
法令学習などでは、入門レベルの講座でないかぎり、レジュメだけでは情報量が不足する。そのため、補助資料を用意することになるが、講義中の取り扱いには注意が必要である。原則として講義中は講義に集中すべきであり、資料に目を落とすとしてもレジュメに限るべきである。受講者が補助資料に集中し始めると、講義は上の空で聞いていることになる。これでは研修を開催する意味がなくなる。研修は読書時間であってはならず、講師が生の言葉で伝えようとするものをしっかり吸収してもらいたいのである。このような事態を防ぐには、あらかじめ「補助資料は、講師の指示があるまで開かないこと」といった注意を与えておくべきである。
グループ討議や演習を行う際には、実施手順を詳しく案内することが重要である。何度も同様の演習を指導してきた講師にとっては、実施要領は自明のことと感じられるが、受講者は戸惑っていることが多い。口頭で説明するだけでなく、「演習実施要領」などの文書を用意し、それを用いて考え方や手順を説明することが望ましい。また、実施意図が十分に理解されないままで討議に入った場合、講師の意図と異なる議論が展開する恐れがある。これを防ぐためには、演習目的などを文書化すると同時に、検討の途中経過を記録できるメモ(ワークシート)の用意が有効である。
研修に参加する受講者に事前学習を課すことがある。これらの学習は講師の指導のもとで行われるものではないため、教材は自習に適したものでなければならない。まれに講義で使用予定のPPTスライドを事前配布することがあるが、あまり好ましいとは言いがたい。レジュメは講義を聞きながら理解することを前提に作成されているため、これだけ先に目を通しても満足のいく事前学習ができるとは考えにくいためである。予算的に可能なら、市販文献などの活用も考えてみる価値がある。事後課題についても同様である。
ときに講師は親切心から講義の直前までスライドの改訂や追加を続けることがある。このような場合、当日の配布資料と表示スライドが不一致を起こしてしまう。その結果、スライド番号が狂って講義に支障が出るだけでなく、配布資料の不完全さを感じさせてしまい、講義への信頼感を大きく低下させる恐れがある。よほどの事情がない限り、配布資料とスクリーンに表示される情報は、完全に一致させておかなければならない。また多くの場合、受講者は講義後に追加分のコピーを欲しがるため、やむを得ずスライドを追加する場合には、追加資料の配布準備をしておくべきである。
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