教材の品質管理にあたっては、完成した教材の事後チェックによる品質保証だけでなく、作り込みの過程で問題を生じさせないよう、標準化への取り組みや中間段階における承認ルールの制定などの工夫を行うこと。
教材の品質管理にあたっては、完成した教材の事後チェックによる品質保証だけでなく、作り込みの過程で問題を生じさせないよう、標準化への取り組みや中間段階における承認ルールの制定などの工夫を行うこと。
教材品質をチェックする際に、すぐに目につくのが誤字・脱字等の単純な校正ミスである。ミスとしては単純ではあるが、それだけに頻繁に生じやすく、根絶するためには多大の労力を要する。そのため、社内研修で使用する教材作成にあたっては、検査に関して一定の基準を設け、「ここまではやる」「これ以上は許容する」という割り切りも必要である。たとえば、「通常の教材では、担当者自身のチェックと同僚による2次チェックを実施する」「役員研修と社外向け研修では品質管理責任者による3次チェックを実施する」と決め、それで見逃した誤字・脱字は許容すると決めることである。なお、印刷後に発見した誤字・脱字については正誤表で対応する。
誤字・脱字とは異なり、法改正への対応漏れは決して見逃してはならない。「みんなで協力して」「気づいた人が責任を持って対応」ということでは「連帯責任は無責任」の過誤に陥ってしまう。法改正情報の確実な把握のためには、その役割を担う者を指名し、責任を持って情報収集にあたるべきである。同時に、把握した法改正が自部門で蓄積した教材のどこにどのような影響を与えるかを識別できなければならない。実際の改訂作業については、部門のメンバー全員が協力して実施することが望ましい。
教材は「書き上げて完成」ではない。会社として責任を持てるものであることを確認しなければならない。作成された教材は、少なくともコンプライアンス部門長の承認を得なければならない。しかし、記載内容によっては専門部署のチェックを受ける必要も生じるであろう。たとえば法律に関する内容であれば法務部門のチェックを受けることが安全である。個別リスクに関する内容は、当該リスクを所管する部門のチェックを受けることが望ましいであろう(例:情報リスクについてIT部門のチェックを受けること)。また社内事例を取り上げる場合には、当事者または所属部門の承諾が必要となる場合も多い。これらの手続きについて、あらかじめコンプライアンス部門としてのルールを定めておきたい。
生産性向上のためには使用するツール(ソフト)の標準化は欠かせないが、品質管理上もこの標準化は重要である。たとえばワープロの文書をPPTに移す過程でミスが生じる恐れがあり、同じPPTファイル間でもテンプレートや使用フォントの違いでフォーマットが崩れ、その修正作業でも同様にミスが生じる恐れがあるからである。なお、標準ツール(テンプレートを含む)の選択にあたっては、「機能が優れているから」より「みんなが使えるから」の方を重視すべきである。また、使用するフォントなども、「見栄えがいいから」ではなく「みんなが持っているから」という基準で選ぶべきである。
意外に盲点となりやすいのが、文章表現などの不統一である。目につきやすいものとしては、「です・ます調(敬体)」と「である調(常体)」の混在である。たとえば、他のメンバーが作成した教材の一部を拝借する際に、挿入する全ての文章の語尾を直す必要が生じ、修正作業の過程で誤字・脱字が発生する恐れがある。このように品質管理の観点からも表現の統一は徹底すべきである。
Copyright © 2010-2019 Aqua Knowledge Factory Co., Ltd. All rights reserved.