コンプライアンス研修のケースメソッドでは、定番となっている検討項目がある。問題を分析し、自分なりの対策を検討させることがポイントである。時間の制約が大きいため、検討事項は無理に欲張らず、余裕を持って取り組める範囲に止めること。
コンプライアンス研修のケースメソッドでは、定番となっている検討項目がある。問題を分析し、自分なりの対策を検討させることがポイントである。時間の制約が大きいため、検討事項は無理に欲張らず、余裕を持って取り組める範囲に止めること。
検討項目は学習目標により決まってくるが、コンプライアンス研修においては標準的な検討項目が存在する。問題事象を扱ったケースに関する検討であるため、「問題点列挙」「原因分析」「リスク評価」及び「対策立案」の4点は必須である。学習目標や受講者に応じて、これ以外の検討項目を追加してもよいが、1つのケースに割ける時間が30分前後~最大60分程度であることが多いため、全体検討や発表・講評のために必要な時間を考慮すると、あまり多くの検討を求めることは難しいであろう。時間の制約が非常に大きい場合には、「問題点列挙」で終わることもあり得る。無理に検討項目を増やすと、結論をまとめ上げることだけに意識が集中してしまい、議論が浅くなる恐れがある。
ケースの検討においては、ケース本文の記述を読んで、「問題である」と感じる事象を抜き出すことから始める。検討の初めに「何が問題なのか」という点について、グループ内のコンセンサスを得ておかなければ、その後の検討で大きなズレが生じてしまう。なお、ここで列挙する「問題点」は、ケース本文から直接読み取れる問題点だけに限定する。推測を交えてしまうと、コンセンサスが得にくくなるからである。
ここでいう「原因」とは、「問題点列挙」であげられた問題事象を引き起こしている原因のことである。ここでは問題事象の背後に存在する要素を、本文の記述をもとに推測していく。多くの問題は、原因と結果が階層構造をなしているため、1つの問題原因が特定されると、さらにその原因が浮かび上がることが多い。厄介な問題であればあるほど、この階層構造も深くなる。時間内に効率よく議論するためは、階層構造を整理することに時間を割かず、推測される原因を並列に列挙するだけでも十分である。なお、同じ理由で、個々の問題事象について個別に検討している余裕はないため、「このような一連の問題を引き起こしている原因を推測してください。」というガイダンスを行うと良い。
次に、問題点を放置した場合に、どのような結果が予想されるかを検討する。この場合の「結果」には、「現実の損失」「危険状態の拡大」「さらなるトラブルの可能性」などが含まれる。この検討においても、個々の問題事象についてではなく、「このような職場を、このまま放置した場合、どのような結果になるかを検討してください。」というガイダンスを行うこと。
この場合の対策には、「この場面ではどのように行動すべきであったのか?」という応急措置と、「問題の再発防止のために打つべき手は?」という解決策に分かれる。学習目標とケースの性質に応じて、講師は受講者にどちらを検討してほしいのかを伝えなければならない。さらに、解決策については、①受講者自身でできる解決策、②上司を巻き込んで部門として打つべき手、及び③全社的に取り組む抜本策などに分かれる。必ず含まなければならないのは①で、「あなた自身の行動」を考えさせることである。これを省略してしまうと他人ごとの議論になり、学習効果が著しく損なわれる。そのうえで、受講者の職位・階層に応じて、②③についてどこまで求めるかを決めればよい。
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