コンプライアンス研修では、全体検討より発表・講評方式の方が好まれる傾向がある。熱心に検討してくれた受講者の努力に報いるために、講評は丁寧に行わなければならない。
コンプライアンス研修では、全体検討より発表・講評方式の方が好まれる傾向がある。熱心に検討してくれた受講者の努力に報いるために、講評は丁寧に行わなければならない。
MBAコースなどでは、全体検討での積極性が成績に大きく響くため、受講者は競って発言を行う。このようなインセンティブが働かないコンプライアンス研修では、むしろ不用意な発言で印象を悪くすることに受講者がリスクを感じ、発言に消極的になることが懸念される。また、全体検討を円滑に進めるためには、受講者にこの学習スタイルに慣れてもらう必要があるが、コンプライアンス研修の限られた時間内では難しいであろう。そのため、コンプライアンス研修では全体検討に代えて発表・講評方式が採用されることが多い。とはいえ、全体検討にはこの方式でなければ得られない学習効果もあるので、講師の判断で講評プロセスの一部に全体検討が組み込まれることもあるが、基本は発表・講評方式である。
発表のためには成果物を文書に取りまとめることが必要になる。文書化ツールとして一般的なのは模造紙である。模造紙の利点は、大型のため発表時に全受講者が視認できることだが、検討過程でグループのメンバー全員が検討過程の中間成果を目で確認しながら討議を進めることができる点も大きなメリットである。コンプライアンス研修ではショートケースが多いため、複数のグループが発表を行っても類似の内容が連続することが多い。また、発表自体が無視できない時間を消費するため、全グループの発表ではなく、検討内容の優れたグループ、または逆に不十分なグループを選抜することが望ましい。
選抜発表の場合でも、講師は全グループの検討内容に目を通すことが必要である。選抜するためには全体に目を通す必要があるが、理由はそれだけではない。受講者はせっかくの検討成果を「無視された」「軽く扱われた」と感じてしまうと、2ケース目以降のモチベーションを低下させてしまう恐れがある。そうならないためにも、簡単でもかまわないので、全グループの成果物に講師が赤ペンで添削を入れるように心がけて欲しい。
講評は丁寧に行うことが鉄則である。グループ検討で話し合われた内容の全てが模造紙上に記述されているとは限らない。発表者が口頭で説明した事項も重要な成果物の一部である。講師は重要事項を記憶しておき、それも含めて講評すべきである。講師は赤ペンを持ち、模造紙上のキーワードへのマーキングや、重要な指摘事項の記入を行いながら講評を進めることが好ましい。発表しなかったグループの検討内容に優れた部分がある場合には、ここで併せて紹介するようにしたい。丁寧な添削指導が行われれば、受講者もそれに応えて密度の濃い検討を行おうという動機付けが得られるであろう。
講評時には安易な結論を見逃してはならない。たとえば、問題解決策として「コンプライアンス研修を実施する」や「意識改革を行う」などという結論で終わっている場合である。これらは問題に対して深い議論が行われていないグループに良くみられるものである。これらの結論が見られた場合には、講師は「どのような内容の研修をどの程度実施するんでしょうか?」「意識改革の方法はどのようなものでしょうか?」と突っ込んだ質問を行い、検討の浅さに気付かせる必要がある。
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