ケースには、標準的なケースメソッド以外にも様々な活用方法がある。既存のケースを異なる形で活用する方法や、自分でケースを作らせることでコンプライアンス理解度を向上させる法など、工夫の余地は大きい。
ケースには、標準的なケースメソッド以外にも様々な活用方法がある。既存のケースを異なる形で活用する方法や、自分でケースを作らせることでコンプライアンス理解度を向上させる法など、工夫の余地は大きい。
ケースシートに書かれた情報をもとに、それを自分の問題として捉え、問題発見と解決策の検討を行うのがケースメソッドの基本スタイルである。講義中心の知識学習に比べれば、これだけでも学習効果は格段に向上するであろう。しかし、ケースの活用範囲はそれにとどまらない。せっかく作成したケースなのだから、多様な活用法を工夫することで、コンプライアンス教育の成果をさらに高めたい。
簡単な応用方法として、受講者自身が講師となり、ケースを活用した指導を行う方法を学ばせることがあげられる。とくに管理職に有効な方法で、自分の部下を受講者としてケースメソッドを実施する場面を想定し、「自分だったらどのような指導を行うか」を考えてもらうのである。この方式には2つの利点がある。1つは、コンプライアンスに関する部下指導のスキルを習得できることである。部下の問題行動に気づいた際の指導方法を、ケース指導の方法を検討する過程で習得することになるのである。いま1つは、指導方法を練る過程で、自分自身のコンプライアンス理解を深めることができる点である。一般に、教えるためにはより深い理解が求められるからである。
研修会場で与えられるケースは、たとえそれが社内で作成されたものであったとしても、自己の業務に完全に即したものではありえない。そのため、どうしても一般論として理解されがちになる。それに対して、テーマを与えて、「あなたの業務について、ケースを作成してください。」と言われれば、自分の業務に完全準拠したケースが出来上がる。たとえ出来上がったケースが稚拙なものであったとしても、「自分たちの業務を扱ったケース」を前にすれば、コンプライアンスをより身近なものとして考えられるはずである。このとき、既存のケースはよきお手本となる。また、作成したケースを職場に持ち帰って共有してもらえば、その部門のコンプライアンス理解度も向上するであろう。加えて、ケース作成の過程でコンプライアンスに関して深い思索を行うため、作成者自身の理解度も一段と高まるであろう。
これは、蓄積されたケースを有効活用する方法である。イントラネット上でケースと設問を公開し、自由参加方式で解答を募るのである。予算があれば、「先着10名の中から、審査の上、優秀解答には千円分の図書カード進呈」などのインセンティブを設けることもできるであろう。ケースメソッドでは、数多くのケースにあたることでより大きな学習効果が期待できる。コンプライアンスについて考える習慣をつけるためにも、継続的に題材を提供することが望ましい。
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