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新任コンプライアンスリーダーの手引き

1.コンプライアンス・リーダー入門

 コンプライアンス・リーダーとは、各部門に配置されたコンプライアンス経営の重要機関です。あなたには、コンプライアンス方針の確実な浸透定着化とコンプライアンス問題の円滑な解決のための神経系統としての役割と、問題解決の実行者という2つの役割を果たすことが求められています。

コンプライアンス・リーダーとは

 コンプライアンス・リーダー(以下、CL:Compliance Leader)とは、社内のコンプライアンス体制における重要機関の1つです。CLは一定の基準(職位、経験、能力要件等)に基づき、定められた組織単位ごとに任命されます。各部署に配置されたCLを通じて、コンプライアンス経営に関わる様々なコミュニケーションと問題解決が実現されます。いわば、職場におけるコンプライアンス担当役員(以下、CCO:Chief Compliance Officer)の代理人です。

CLへの主な期待

 コンプライアンス経営の推進については、コンプライアンス部門が責任を負いますが、本社機構の1つであるため、全社に張り巡らされた業務ラインの隅々にまで目が行き届かない恐れがあります。そんなとき、コンプライアンス方針の確実な伝達などの面でCLがコンプライアンス部門の機能を補ってくれることが期待されます。また、各現場で発生した問題事象や懸案事項の報告などの役割が期待されます。このような情報伝達は、職制を通じて部門長の責任において行われることが原則ですが、コンプライアンス経営の重要性に鑑み、それを補うためのCL制度が併設されているのです。

CLの具体的職務

 CLの最も重要な職務は、トップやコンプライアンス部門、及び個々のリスク主管部署から発信されたコンプライアンス関連のメッセージを、組織の末端まで確実に浸透させることです。つぎに重要なのは、各部門に存在するコンプライアンス経営を脅かすリスク(以下、コンプライアンス・リスク)への対応能力を向上させることです。その中心となるのが職場内のコンプライアンス教育の実施です。部門固有のリスクへの対応や、職場の実情に合わせた教育はCLに期待するところが大きいのです。最後にコンプライアンスに関わる各種の報告です。報告内容には定例報告と緊急時報告の2つがあります。前者はコンプライアンス教育の実施報告などコンプライアンス部門からの依頼に基づくものが中心です。後者はコンプライアンス違反や重要な相談事項などが発生した場合など、個別具体的な報告義務が規定されていなくても、CLの判断でコンプライアンス部門に報告を行うものです。

身につけたいスキル(1)

 CLとして身につけておきたいスキルを整理します。まずはCLの職務に直接関係する知識です。最も重要なのは社内のコンプライアンス体制の理解です。CL自身が疑問を感じた場合など、「どこに問い合わせればよいのか?」「その手続きは?」といった知識です。つぎに基本的なルールの理解です。法令はもとより社内規程にしても、CLに完全な知識を期待することはできません。しかし、CLとして相談を受けやすいルールなどは基本的な考え方を理解しておくことが求められます。最後にリスクマネジメントの素養です。職場に存在するコンプライアンス・リスクを把握し、部門長と協力して対策を進めるのもCLの重要な職務です。

身につけたいスキル(2)

 CLの職責を果たすためには、コミュニケーション能力が欠かせません。各種伝達事項を職場全員に聞いてもらうためには「伝える力」が重要です。また、職場において「CLに相談しやすい雰囲気」を築くためには「聞く力」が重要になります。これらのスキルは人間的な総合力が求められますので、CLには人柄を磨く努力も求められるといえます。

<活動指針>

  • CLとは、各職場におけるコンプライアンスのキーパーソンである。
  • CLは、上司(部門長)とコンプライアンス部門の補佐役である。
  • 情報伝達とコンプライアンス教育はCLの最も重要な職務である。
  • コンプライアンス体制、基本ルール、リスク対策の素養を身につけよう。
  • 人間的な総合力としてコミュニケーション能力を磨こう。