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新任コンプライアンスリーダーの手引き

12.リスク感性を高める

CLが相手にするのは自部門のコンプライアンス・リスクです。リスクはビジネスや社会環境に追随して絶え間なく変化します。CLの使命を確実に果たすためには、これらの変化が生み出す新たなリスクに敏感になる必要があります。些細な変化に対しても問題意識をもって接するように心がけてください。

マスコミ報道

 部門のコンプライアンスを確かなものにするためには、マスコミ報道で紹介される様々な他社事例について、他山の石として積極的に学ぶ姿勢が大切になります。ここで注意しなければならないことは、事例とはあくまでも他社がその時点で置かれた状況下で生じた特殊な現象であるという点です。同じことがそのままわが社でも起こるということは考えられません。そのため、事例に学ぼうとする際には、「なぜこのような問題が生じたのか?」というメカニズムに踏み込んだ分析を行う必要があります。「同じメカニズムが我々の担当業務に作用したとすれば、どのような問題が生じるだろうか?」と自問する姿勢が大切なのです。そうでなければ、単なる「興味深いお話」で終わってしまいます。

法改正と規程変更

 法律の改正は新たなリスクを生みだします。多くの場合、これまで許されてきた行為が今後は禁止となるからです。改正内容を十分に理解し、自部門の業務への影響を検討し、それに対応した新たな業務手順を整える必要があります。法改正の裏には、それまでのビジネスが政治的・行政的に見て不都合であったという事情があるわけで、改正の意図を正しく見抜き、新法の精神に則った業務再構築を進めなければなりません。また、法改正に合わせて社内規程も改正されることも多いと思われます。こちらに対する対応も欠かせません。

事業内容や顧客の変化

 主力商品のライフサイクルの終焉で新たな商品の取扱高が増大した場合や、取引先の構成比率が変化してきた場合なども、それに伴って新たなリスクが発生していないかどうか、精査する必要があります。新商品には従来の商品にはなかったリスクが内在するかもしれません。新たな顧客からはこれまでにない厳しい要望が寄せられるかもしれません。それに円滑に対応できれば問題は生じませんが、これまでのやり方で対処が難しい場合に、無理な方法が選択され、新たな問題を生じさせる恐れがあります。

組織機構や業務手続きの変更

 社内の業務プロセスは、内部統制の考え方に沿ってリスク対策が施されています。組織機構が変更になると、内部統制の仕組みに影響が生じることがあります。そこに思わぬ抜け穴が生じ、それが不正行為や重大な処理ミスの原因となることが考えられます。組織の変更がなくても、情報システムの更新などで新たな業務手続きが導入された場合も同様です。このような場合には、新組織・新業務のリスク分析を行って、不祥事の予防に努めなければなりません。

担当者の交代

 担当者の交代もリスクを生じさせることがあります。ベテラン担当者が異動し、不慣れな者が後任になった場合、処理ミスが発生するリスクが高まります。このようなケースでは、後任者が業務に習熟するまで、業務の重要性に応じた特別措置(当面の2名体制など)をとることも必要です。逆に、同じ担当者が長期にわたって同一業務を担当している場合も要注意です。このような業務では、不正行為が行われていても外部からのチェックが難しく、重大な問題が生じる恐れがあります。

<活動指針>

  • 報道された事件の研究ではメカニズムの理解を重視すること。
  • 法改正は、無知による法令違反などのリスクを生じさせることがある。
  • 商品や顧客の変化は、それに適応できない場合にはリスクとなる。
  • 組織や手続きの変更時には、リスクの洗い出しを行うこと。
  • 担当者の交代は、事務ミスなどのリスクを生む。