法令違反に該当するかどうかの判断は、原則として専門部署や専門家のアドバイスを前提とすべきです。しかし、彼らのアドバイスを理解するためには、基礎的な用語の理解は必要です。ここでは、民事・刑事の責任がどのようにして生じるのかを理解してください。
法令違反に該当するかどうかの判断は、原則として専門部署や専門家のアドバイスを前提とすべきです。しかし、彼らのアドバイスを理解するためには、基礎的な用語の理解は必要です。ここでは、民事・刑事の責任がどのようにして生じるのかを理解してください。
コンプライアンス問題を考える際には、様々な業務行動に法律を適用して、違法・適法の判断を行います。法律の規定には任意法規と強行法規が存在します。前者については、当事者間で法の規定と異なる合意が得られた場合にはその合意内容が当事者間のルールとなります。後者についてはこのような例外は認められず、法律の条文通りにルールが適用されます。コンプライアンスで問題になるのは主として後者です。また、裁判官が事件に法律を適用する際には、条文の字義通りの解釈(文理解釈)ではなく理詰めの解釈(論理解釈)を行うことがあります。しかし、我々一般人が法律を解釈する際には条文と判例以外に根拠を求めるのは危険です。
社会人として常識的な判断能力を有する者が、故意または過失によって、他人の権利・利益を法令に違反して侵害し、その結果として相手に損害が生じた場合には不法行為が成立します。不法行為による損害が立証された場合には、加害者に民事責任が生じ、損害賠償を求めることができます。しかし、相手が幼児や制限能力者など、判断能力を欠く場合には責任は問えません(泥酔などで判断能力を失った者には、責任を問うことが可能)。
民法では過失責任の原則が採用されているため、たとえ他人に損害を与えても、故意や過失が認定されなかった場合には責任を問われることはありません。故意は「わざと」ということですので明快ですが、過失とはどのような状況を意味するのでしょうか。法律的な意味合いは、「他人の権利を侵害することを知るべきでありながら、不注意のためにそのことを知らないで、ある行為をするという心理状態」とされます。しかも、行為を行った本人自身の基準に照らしての過失ではなく、当該行為者と同じ職場・地位・立場等に属する標準的な人にとっての注意義務が基準となるとされます。したがって、ある業務の担当者が手続きを誤ってお客様に損害を与えた場合、担当者が新入社員であったか、ベテランであったかは問題ではなく、その業務を担当する標準的な社員であれば、その行為は過失といえるかどうかという基準で判断されます。なお、一部の法令では無過失でも責任が問われる場合があります。
犯罪とは、法律に定められた構成要件(犯罪成立のための必要条件)を満たし、その行為が違法であり、行為者に責任を問うことができる状況で成立します。たとえば、「他人の体を刃物で切る」という行為は、傷害罪の構成要件を満たします。しかし、外科医が手術のために患者の体を切り開いた場合には正当業務行為にあたり、違法性を認めることはできません。正当防衛や緊急避難なども同じ扱いです。また、行為者が心神喪失状態にあったと認定される場合には責任を問うことができませんので、この場合も犯罪にはなりません。犯罪が成立すれば刑事責任が問われ、刑(死刑、懲役、罰金など)が科されます。
以上の他に、問題行動の結果、監督官庁から営業許可や免許を取り消されたりする形で責任を問われる場合があります。このような責任を行政責任(行政上の責任)と呼びます。また行政上の目的から禁止規定が設けられるケースがありますが、これらは取締規定と呼ばれ、これに違反しても刑事責任まで問われることはありません(取締規定違反)。
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