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コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(入門編)

6.コンプライアンス研修の企画

講師業務の最初のステップは研修企画である。理想とするコンプライアンス経営と現状のギャップを把握し、その解消のために誰にどのような教育を施すべきか、その中で研修という手段で実現すべきことは何かを検討することから研修企画は始まる。そしてその研修で達成すべき具体的な学習目標、学習内容、及びその効果測定の方法まで検討することで研修企画は完了する。

方針確認と現状分析

 研修企画にあたって、「一般的なコンプライアンス研修で良い」という意見を聞くことがあるが、これは好ましくない。世の中には「一般的な会社」など存在しない。したがって「自社に合った研修」が一般的であろうはずがないのである。わが社が考えるコンプライアンス経営とはいかなるものか、その理想に届かないのはなぜか、それにどのような手を打つべきかを考えて教育課題(人材育成課題)を取りまとめる。そして、その課題達成のために研修でできることを選択していくのである。このようなプロセスを経れば、会社ごとにユニークな研修ニーズが明らかになるはずである。

目的設定と研修体系

 解決すべき問題が明らかになれば、その解決過程で誰がどのような役割を演じなければならないのかという検討に移る。ここで基礎となるのは人事制度として定められた職能要件表などの資料である。ここから、階層別(職種別)に、どのような役割が期待され、どのような能力が要求されているのかが明らかになる。これをコンプライアンス上の課題と突き合わせ、どの階層がどのような個別課題に取り組むべきなのか、そのために必要な能力は何かを明確にして研修目的を定義する。次に、これをどのような研修科目群(講座群)で実現するのかを検討すれば、コンプライアンス研修の体系が完成する。

学習目標の設定

 学習目標は、講座ごとに、受講者に何ができるようになってもらいたいのかを整理して定義する。一般には、「○○が理解できる」「○○の場面で、○○の行動がとれる」のような記述が採用されている。1つの講座に複数の学習目標が設定されることが多いが(3目標前後)、あまりにも多くの目標が設定されると、研修としてのまとまりが希薄になり、焦点がぼやけてしまい、受講者が「何を学ぶべきか」をつかみ切れずに終わる恐れがある。

学習項目の選択

 設定された学習目標と現時点で受講者が持つ能力とのギャップを明らかにして、「何をどの水準まで学ぶべきか」を整理したものが学習項目である。テキストの目次のようなものをイメージすればよい。この段階まで来ると、かなり具体的な講座イメージが出来上がってくる。ここで注意しなければならないことは、「この程度の知識は持ってほしい」「この程度の対処はできるようになってほしい」という企画サイドの希望のみが先行し、現時点での受講者の能力とのギャップが大きくなりすぎないようにすることである。このギャップが過大になると、「難しかった」とか「自分の業務に必要ない高度な内容だった」という印象に繋がり、かえって学習効果が低下する恐れもある。

効果測定の検討

 研修効果として何を求めるのかは企画段階で検討される。したがって効果測定の方法も、企画に関与した者がこの段階で検討しておかなければならない。法改正に関する知識伝達が目的であれば理解度テストを行う方法も有効であるが、行動変容を狙った研修ではテストは使えない。このような場合には、受講者の上司の協力を得て、研修参加の前後で受講者の行動に見られた変化を観察することも必要になるであろう。受講後アンケートだけが効果測定の方法ではないのである。

<5 Check Points>

  1. 「一般的なコンプライアンス研修」では企画とは言えない。
  2. 経営課題への取り組みで、誰に何を求めるのかが目的設定の鍵となる。
  3. 受講者にどのように変わってほしいのかを定義するのが学習目標の設定である。
  4. 学習項目の選択では、適正な難易度の見極めが大切である。
  5. 研修効果測定の方法は企画段階で考えておかなければならない。