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コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(入門編)

7.講座の基本設計とレッスンプラン

 研修は講師の持つ知識の披露が目的ではない。合理的な学習プロセスに沿って必要な知識を伝達し、その定着化を促す工夫を行わなければならない。基本設計とレッスンプラン作成はそのための必須手順である。また、研修ノウハウの共有・伝承と品質管理のためにも、レッスンプランの効果的活用を考えるべきである。

講座の基本設計

 講座の基本設計とは、講座の大筋の流れと各段階での学習項目を明確化することを指す。しっかりした基本設計ができていない講座は、単なる知識の披露に終わってしまう。1つの講座には、学習目的を明示して動機づけを行う導入部、前提となる知識の解説から始めて順次高度な学習に進んでいく本論、学習内容を確認し応用力を身につける演習部、最後に研修全体の振り返りと学習内容の活用を意識づけるまとめなど、研修の性格や学習内容に応じて合理的に展開していかなければならない。これらを計画するのが基本設計である。

レッスンプランとは

 レッスンプランとは、基本設計をもとに学習内容の詳細を決めていく過程で作成されるドキュメントで、研修の詳細設計書とも呼ぶべきものである。学習項目を大中小分類で記述して、項目ごとに何をどのような手法(講義、個人演習、グループ討議など)を用いて、どの程度の時間をかけて教えていくのか、指導において留意すべきことは何か、といった情報を整理したものである。どこまで詳細なものを作成すべきか一概には決められない。その講師にとって豊富な経験がある内容を扱う講座では、大分類と大まかな時間配分が分かれば十分かもしれないし、初めて担当する講座では、可能な限り詳細に作成することが望ましいといえるだろう。

レッスンプランの作り方

 レッスンプランのもととなる情報は基本設計での検討結果である。この情報をもとに、順次細分化していき、講義内容を整理していく。学習項目の大分類としては、基本設計で定義した導入部、本論といった大まかな項目を採用する。本論が明らかに異なる複数の学習項目に分割できる場合には、これを以て大分類としてもよい。中分類は大分類を1段階下位の概念に分割したものである。学習時間にして30分~2時間程度を目安とする。小分類はさらに下位への分割となるが、中分類の学習の中での学習ステップと考えてもよい。これより下位の分類の要否は学習内容や総所要時間などを勘案して決めればよい。

レッスンプランの効用

 レッスンプランは研修のノウハウともなりうる資料である。テキストなどの教材を共有することでも一定のナレッジシェアは可能であるが、レッスンプランの共有ができれば講座の進行方法まで含む貴重なノウハウ共有を実現できる。複数の講師で多数開催の研修を分担する際に、均質な研修を実施するためにも役に立つ。一度きちんと作っておけば、その後の研修を企画する際に貴重な情報源となるし、新たにコンプライアンス部門に異動してきた新任者の教育のために使うこともできる。また、講座実施後に改善を要する箇所が発見された場合、そのつど改定していけば、コンプライアンス研修の品質向上にも大いに資することになるだろう。さらに、上位者が下位者に講師を任せる際に、事前にレッスンプランの作成を命じておけば、研修の品質管理にも役立つであろう。

PPTでの代用

 最近、教材としてMS-PowerPoint®(以下PPT)などのスライドショーソフトを使用するケースが多くなっている。これらのツールを研修教材に使用することには賛否両論あるが、使用する場合にはこれをレッスンプランの代用として活用できる。ただし、スライドのみでは情報不足であるため、「ノート」などを活用して情報を補っておく必要がある。

<5 Check Points>

  1. 基本設計は、合理的な学習順序の設計であり、省略してはならない。
  2. レッスンプランをノウハウ共有のツールとして活用すべきである。
  3. レッスンプランを研修の品質管理ツールとして活用すべきである。
  4. レッスンプランはトップダウンで検討する。
  5. PPTでレッスンプランの代用とする際には情報を追加する。