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コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(入門編)

10.話の早さと発声の工夫

 発声の特徴は生物学的な要因に大きく左右されるので、誰もが同じようにできるとは限らない。しかし、経験から得られた様々な工夫を組み合わせることで、かなり改善が可能である。話の早さ、滑舌、抑揚、間の取り方、そしてマイクの利用や姿勢の保ち方など、正しいやり方をトレーニングすることで、聞きやすい講義を実現したい。

最適なスピード

 これには個人差があり、「このスピードでなければならない」という決めつけは避けた方が良い。300字/分では非常に遅く感じるし、400字/分ではかなりの早口であろう。無理に速度を調整しようとすると、持ち前の話のリズムが壊れ、肝心の講義の説得力も損なわれてしまう恐れがある。話すスピードの目安は1分間に350字前後と言われるので、一応の基準をそのあたりに置き、自分のスピードは速めなのか、遅めなのかを自覚することから始めたい。

滑舌と抑揚

 最近ではTVのバラエティ番組などの影響で早口の人が増えている。早口の講義の問題点は、声の聞こえにくさと単語の聞き取りにくさにある。声の聞こえにくさについては、滑舌を良くすることで、かなりの程度改善できる。滑舌の訓練法としては、ワインのコルク栓などを歯でかんだ状態で、本を1ページほど読むことをお勧めする。毎日練習することでかなり改善するはずである。単語の聞き取りにくさについては、抑揚をしっかりつけることで改善が可能である。我々は、文字の1字1字を聞き分けているのではなく、単語単位で聞いて理解しているので、単語の区切りを識別できれば、かなり聞きやすくなる。

間の取り方

 早口の問題点として、展開の速さに受講者がついていけない点もあげられる。この点については、適切な間の取り方を心がけることにより改善が可能である。話を小さな単位に分割し、次の話に移る前に少し間をおく方法もある。また、スライドショーを使っている場合、スライドの切り替えごとに歩いてキーボードに近付き操作し、操作が終わればもとの場所に戻るというように、強制的に間をとるような仕掛けを工夫しても良い。

声の大きさとマイク

 声の大きさも個人差が大きく、すぐに改善できるものではない。コンプライアンス研修では同じ研修を短期間に何回も実施しなければならないので、無理な大声を出して声帯を痛めて声を潰すことの方がむしろ問題であろう。このようなときはマイクを使えばよい。しかし、音量調節に注意しないとハウリングや声割れなどの厄介な現象を起こしてしまう。講師がこれに気を取られて、ささやくような声で話をせざるをえなくなると、声に力がこもらなくなり、説得力が失われるばかりか、受講者の眠気を誘ってしまう恐れもある。会場運営の改善と併せて検討すべきである。

声の通りやすさと姿勢

 声の通りやすさも個人差があるが、ちょっとした心掛けでかなり改善できるものである。まず、講義を行う際の姿勢に気を配ることである。講師は床に対して胸板が垂直になるように姿勢よく立つこと。そして受講者に向かって、声が胸板と垂直に出ていくような気もちでまっすぐに発生することである。良い姿勢での講義は、受講者の印象も良いはずである。逆に、両手をデスクついて覆いかぶさるような姿勢で発せられた声は床に吸収されて受講者に届きにくいし、猫背で発せられた声は籠った感じになって聞き取りにくいものである。必然的に講義の印象も悪くなる。

<5 Check Points>

  1. 無理に早口を直そうと焦らず、まずは自分の特徴を自覚すること。
  2. 滑舌の良さと適切な抑揚は聞きやすい話し方の基本である。
  3. 適切な間をとることで、受講者に理解する余裕が生まれる。
  4. 声が届きにくい時は、音量調節に注意してマイクを使うこと。
  5. 良い姿勢は印象を良くするだけでなく、聞きやすい講義に繋がる。