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コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(入門編)

13.アガリへの対処

 アガリは誰でも経験することで、恥ずかしいことではない。しかし、そのまま放置しておけば講義に差し支えるので対策が必要である。最も効果的な対策は入念な準備である。準備が自信につながり、アガリを予防してくれる。その他、講義の冒頭5分間の話題を暗誦することや、好意的受講者に支援を求めることも有効である。自分にあった対策があれば、是非工夫してみてほしい。

アガリは恥ではない

 我々は過度の緊張の結果、本来の能力を発揮できない状態になることがあるが、これをアガルという。誰にでもあることであり、そのあらわれ方に個人差があるに過ぎない。むしろアガルのは、その仕事を有意義なものと捉え、それを立派に成し遂げようとする強い意識を持てているということであり、決して恥ずかしいことではないと理解すべきである。ベテラン講師でもアガルときはアガルのである。しかし、アガリすぎては講義に支障がでるので何らかの対策が必要になる。

準備とリハーサル

 アガリ防止の基本は入念な準備である。「きちんと準備ができている」という自信がアガリ防止の特効薬になる。まず、教材は自分で作るか細部まで目を通し、知らない言葉を調べ、予想される質問に答えられる情報を用意する。そのうえで、上司や同僚の前でリハーサルを行うことを勧める。そこでの疑似体験とフィードバックに基づく改善により、不安はかなり解消するはずである。さらに、講義開始前の数分間、テキストに目を通しながら全体のシナリオを再確認しておくことである。

最初の5分を乗り切る

 それでも不安な人は、最初の5分間の講義を徹底的に反復し、暗誦してしまうことである。これができれば、アガッテしまっても何とか最初の5分を乗り切れる。この5分を過ぎれば会場の雰囲気に慣れ、次の展開を考える余裕が出てくるものである。この最初の5分の内容は、自己紹介や講座概要の説明など、淡々としかも堂々と話せる内容が好ましい。下手に笑いを取ろうとしてスベッテしまうと逆効果である。この間、ゆっくりとした動作で腕時計を外して教卓に置くなどすれば、受講者にも慣れた印象を与えられ、その後の講義にプラスに働くはずである。

好意的受講者を探せ

 しばらく講義を続けると、受講者の様子を観察する余裕が生まれてくる。受講者の中には、しきりに頷きながら聞いている人や、熱心にメモをとっている人が何人かいるはずである。そのような好意的な受講者を見つけたら、一定の時間、その人だけを意識して講義を続けると良い。自分が受講者に好意的に受け入れられているという安心感が得られ、講義にも自信が持てるはずである。ここまでくれば、アガリは克服できたも同然である。

自分なりの工夫

 その他にも、自分なりに工夫してみる努力も必要である。ある人は、小さなお守りを手に握り、気持ちが落ち着くまで、受講者に悟られないようにそれをいじるという。別の人は、いわゆる「指まわし(指と手のひらで卵を包むようにドーム型を作り、指同士を互いに触れないように回す)」を数分間続けることで頭をすっきりさせ、これをアガリ防止に役立てるという。これらの工夫は大脳生理学的にも正しいようだが、自分なりのジンクスや気休めとしての効果も大きいであろう。是非、自分なりに工夫してみてほしい。

<5 Check Points>

  1. 誰でもアガリは経験する。恥ずかしいことではない。
  2. アガリ防止の特効薬は入念な準備につきる。
  3. 最初の5分をなんとか乗り切れ。そうすれば道は開ける。
  4. 好意的受講者を探せ。彼らが力になってくれる。
  5. あとは自分なりの工夫で、縁起の良いジンクスを作れ。