教壇に立った講師は、自分自身を公的な存在として再認識しなければならない。コンプライアンス研修の講師は教壇では社長の代理人としてふるまわなければならないのである。また、良い講義を心がけると同時に、受講者に不快な思いをさせる要素を少なくする努力も必要である。相手を不快にさせるような癖を早く直すことや、不用意な言動を回避する注意深さが求められる。
教壇に立った講師は、自分自身を公的な存在として再認識しなければならない。コンプライアンス研修の講師は教壇では社長の代理人としてふるまわなければならないのである。また、良い講義を心がけると同時に、受講者に不快な思いをさせる要素を少なくする努力も必要である。相手を不快にさせるような癖を早く直すことや、不用意な言動を回避する注意深さが求められる。
研修運営は受講者中心に考えるべきであるが、研修の実施サイドからみると講師はその中核であり、総合的なコーディネータであるといえる。研修のムードも学習効果も、その多くは講師の働きによって決まる。講師はそのような重責を担う立場を自覚しなければならない。研修中に講師が動揺してしまえば、その会場は崩壊の危機にさらされる。講師はどんな時でも自分が最後まで全てに責任を負う覚悟で、冷静に振舞わなければならない。
「12.質問への対応」で紹介したような反発の意を込めた質問が発せられる背景には、講師側の不適切な態度や不用意な発言が潜んでいることも多い。コンプライアンス研修の講師は社長の代理人であるという点は既に述べたが、講師自身が社長ではないわけで、会社からのメッセージ伝達以外の場面で尊大に振舞うことなどあってはならない。受講者はそれぞれの専門部署におけるプロフェッショナルなのである。講師としては、自分の話を聞いてくださる受講者に対する敬意を忘れてはならない。
なくて七癖と言われるように、誰にでも言葉の癖はある。名人と呼ばれる噺家などでもよく聞いていると何らかの癖が見つかる。「え~」「え~っと」「まあ」などという出だしの癖、「~でね」「~でぇ」といった語尾の癖など、人それぞれである。このような癖は気にし始めると言葉が出てこなくなってしまう。直す方法もなくはないが、上司や同僚に尋ねてみて、気にならない程度の癖であれば、気が付いたら少しずつ直していくという程度の心がけにとどめる方が無難であろう。「気になる」という指摘を受けた場合には、一度自分の講義を録音して聞いてみることを勧める。自分の声を聞くことで、どの程度まで改善が必要なのか、自分で判断できるはずである。
態度の癖も人により様々である。言葉の癖とは異なり、態度の癖はマナー違反につながる場合や研修効果を低下させる恐れもあるため、講義風景をビデオ撮影するなどの方法で、早めに気付いて直したい。たとえば、ズボンのポケットに手を入れて話す癖のある人は、受講者から「マナー違反だ」「態度が悪い」などという反感を買う恐れがある。反感を感じる講師の説くことに素直には従えないであろう。このような講師は、手に資料やマイクを持つことで、手をふさいでしまうことが有効である。教卓に手をついて下を向いて話す癖のある講師の場合、自信のなさの現れであるという誤解を招きやすい。思い切って教卓から離れて話すことを勧める。最初は不安であろうが、すぐに慣れることができる。
講師は教壇に立った瞬間に公的な存在になることを自覚しなければならない。既に述べたように、コンプライアンス研修では講師は社長の代理人である。講師の不用意な言動は会社の信用を傷つけることも忘れてはならない。日常会話では許される言葉遣いも教壇では許されないことも多いだろう。たとえば、「営業活動に嘘や方便はつきものだよ」という冗談も、営業部門内部では通るかもしれないが、教壇で同じことを言えば営業職に対する誹謗中傷となるだろう。また、大勢の人の前に立つことを考えると、身なりに注意する必要もある。たとえば会場に来る途中で俄か雨に降られることもあるだろうが、それに備えて研修のある日は必ず傘を持ち歩くことも講師のマナーである。ずぶ濡れの講師の話を聞くのは誰でも気分の良いものではない。
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