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コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(入門編)

19.研修効果測定とアンケート

 コンプライアンス研修も教育投資である以上、結果を評価し改善することを忘れてはならない。評価の視点や手法には様々なものがあるが、代表的なものは受講者アンケートである。しかしこれは満足度調査にほかならず、その利点と限界を理解して上手に活用しなければならない。やりっぱなしのアンケートでは意味がない。是非、改善に活用すべきである。

研修効果の考え方

 研修効果を評価する際には、大きく「研修そのもの評価」と「研修が経営に与えたインパクト」の2つに分けて考えなければならない。前者の評価では、研修の実施目的や設定された学習目標に対してどの程度適合した講座となっていたかを評価することになる。後者の評価は容易ではないが、研修実施後に受講者の行動がどのように変化したかを把握して評価することや、様々な経営指標がどの程度の影響を受けたかを基準に評価することになる。

様々な評価方法

 研修そのもの評価方法としては、評価能力を有する者が研修をオブザーブし、指導内容や教材の完成度を評価することが最も確実であろう。さらに客観性を求めるなら受講者アンケートによる満足度調査の結果を考慮することも考えられる。一方、研修が経営に与えたインパクトの評価は個別具体的に検討する必要があろう。たとえば内部通報制度の周知のための研修を実施したのであれば、実施前・実施後の通報件数の増減や通報内容の質的変化をモニターする方法などが考えられる。

アンケートで分かること

 研修実施後に行われる受講者アンケートは、最も手軽で実務で多用される研修評価手法である。一般に、「内容」「講師」「教材」「運営」などについて、3~5段階で評価が行われることが多い。自由記入欄を設けることも多いが、ほとんど記述が見られない企業も見られる。実施にあたっては、基本的に受講後アンケートは満足度調査であると考えるべきである。なぜなら、受講者は研修企画に関与しておらず、意図した目標達成度についての評価能力を有していないため、「今の自分にとって役に立ったかどうか」という視点でしか回答できないからである。また、講師・教材・運営の評価についても、所詮は素人による評価であり公平で客観的な評価にはなりにくい。この点を理解したうえで活用するのであれば、アンケートは研修企画を含む講座改善に有益であろう。

アンケートの設問設計

 アンケート用紙を設計する際にも、「何のためのアンケートか」という視点が重要である。指導方法や教材の完成度をあげたいのであれば、個々の演習の満足度や教材の記載内容の過不足を直接聞く必要がある。そもそもこのような研修を実施することに意義を感じるかどうかを知りたいのであれば、講座の各セッションについて、「役に立ったか」「参考になる程度か」「不要か」といった聞き方をすべきであろう。コンプライアンス研修を実施することは会社の方針として決まっているので、講座設計をどのように改善すれば現場の実情に合った教育につながるかを検討する必要があるが、そのための材料を得るのがアンケートの目的となる。

アンケートの活用法

 アンケートは回収してファイリングしておくだけでは意味がない。講座の改善に活かすことができないのであれば、時間の無駄であり実施しない方がよい。まずは講座自体の改善を要する点を明らかにするために活用したい。複数回実施される講座では、回を追うごとに改善され、満足度の高い研修になっていなければならない。一方、講師による品質のばらつき防止にも活用したい。満足度調査であるから、評点がそのまま講師の実力を表しているとは限らない。評点の高い講師の中には、受講者におもねって、本来伝えるべき耳の痛い話を省略している可能性もある。リハーサルやオブザーブによる評価など、複数の観点から評価を行うべきである。

<5 Check Points>

  1. 効果測定の目的と実施手段は企画段階で検討しなければならない。
  2. 効果の測定方法はアンケートだけではない。
  3. 安易なアンケートでは満足度調査に終わる。
  4. アンケート設計は活用目的と整合させる。
  5. アンケートは回収して終わりにしてはならない。