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コンプライアンスインストラクター・ハンドブック
(入門編)

20.研修の運営

 一般には研修運営を講師業務に含むことは少ないと思われるが、コンプライアンス部門のスタッフは、講師であると同時に運営業務もこなさなければならないため、研修運営も講師業務の一部として理解すべきである。運営が円滑であれば講師業務の成果も大幅に向上する。運営業務は募集に始まり、会場確保、教材準備、当日の設営業務と事務局業務まで長期にわたる。

募集

 ここでは研修運営のスタートを募集業務からと考える。開催通知を出すためには受講者を選抜する必要がある。「課長職全員対象研修」という場合には、課長名簿をもとに受講日時の割り付けを行い、あとは本人とのやり取りで調整をし、確定したところで開催通知を送付する。この場合、開催通知は受講票に近い性質を持つ。一方、「各部門からの選抜研修」や「完全公募制の研修」の場合には、日時や場所などの研修概要、開催目的、学習目標、受講条件などの受講者が参加意思決定を行うための情報を記載して募集を行うが、受講者が確定したところで、あらためて受講票を送付する必要がある。いずれの場合でも、研修の趣旨や開催の細目情報が受講者に正しく伝わるように、案内を作成することが大切である。

会場の確保

 会場の確保においては、開催日と参加人数が最も重要な前提情報となる。そのうえで、講座内容に応じて備品類の準備を行う。たとえば、マイク準備が必要かどうかの判断材料としては、まず会場の広さと音響効果である。ホテルの会議場などでは、壁や天井の構造に音響効果が施され、かなり広い部屋でもマイクなしで大丈夫だが、オフィスビルではそうはいかない。また、外から聞こえてくる騒音も注意が必要である。時間帯により騒音のレベルが異なることもあり、入念な調査を行わなければならない。

教材の準備

 教材原稿の作成は講師業務としてここでは除く。作成された原稿の印刷手配からが運営業務になる。多くの社内研修では社内で印刷された原稿をコピーする形の教材が中心であるが、コンプライアンスマニュアルのようにきちんと製本される教材の場合には印刷会社に手配する必要がある。これらテキスト類以外の教材も準備する。グループ討議形式の演習が含まれる場合には、結果のとりまとめ用の模造紙や筆記具、発表用に壁面に貼るためのマグネットや粘着テープも忘れてはならない。

会場の設営

 当日の設営業務では、机の配置や備品類のセッティング、飲料や食事の準備など、行うべきことは多い。講義の展開シナリオを頭に描きながら、進行に支障のないように周到な準備が求められる。

当日の事務局

 当日の事務局機能としてまず大切になるのは受付(出欠確認)である。当日になって業務都合を理由に急遽キャンセルの連絡が入ることがある。グループ編成を行っている場合には、編成の組み換えが必要になることもある。外部講師を起用する場合には講師のアテンド業務も発生する。外部講師でなくても社長や役員の講話が入る場合も同様の対応が必要になることがある。研修開始に先立って、開催趣旨の再確認や会場施設、その他の留意事項の案内、講師紹介を行うのも事務局の仕事である。講座が開始された後も、研修の進行に従って教材の配布や回収などの支援業務が必要になることも多い。このような対応は事務局が先回りして対応してくれると、講師は指導に専念でき、進行が非常に円滑になる。終了時の閉会挨拶とアンケート回収、会場の撤収作業も忘れてはならない。

<5 Check Points>

  1. 開催通知では、受講者に研修内容を正確に伝達することが重要である。
  2. 会場は、場所の確保にとどまらず、機材や学習環境の面からも吟味する。
  3. 教材準備は人海戦術である。テキスト以外の補助教材も忘れずに。
  4. 会場設営は講義のシナリオを意識して準備する。
  5. 当日の事務局機能は講師と並んで研修成功の重要要素である。